真藤順丈
(じゅんじょう)作品のページ


1977年東京都生。映画、ウェブ映像コンテンツ製作を経て作家活動入り。2008年「地図男」にて第3回ダ・ヴィンチ文学賞を受賞し、作家デビュー。続いて「庵堂三兄弟の聖職」にて第15回日本ホラー小説大賞、「RANK」にて第3回ポプラ社小説大賞特別賞、「東京ヴァンパイア・ファイナンス」にて第15回電撃小説大賞銀賞を受賞。

  


 

●「RANK ランク」● ★★       ポプラ社小説大賞特別賞




2009年05月
ポプラ社刊
(1700円+税)

 

2009/08/12

 

amazon.co.jp

ハリウッド映画によくあるような、近未来バイオレンス・アクション風の長篇小説。
バイオレンス部分の非道さ、酷薄さには眼を背けたくなりますが、それでも惹き込まれてしまうのは、道州制導入の結果、首都を抱える関東州において飽和状態になった人口・犯罪を減らすため、社会で低位ランクに査定された人間(=執行該当者)を強制処分するという舞台設定が、あながち絵空事とも言えない要素を含んでいるためでしょうか。

そうした制度のため、あらゆる場所に監視の<眼>が設けられ、人々の行動を捉えて随時順位を自動判定していくという仕組み。
主要登場人物は、佐伯篠田槌田春日という2組の特別執行官+補佐官に、監視の眼に対応できず監視障害者となった若い女性の加藤詩織
その容赦なき執行をますますエスカレートしていく佐伯と篠田の一方で、突然に生じた民衆の暴動、爆発。
「ゼロになったら何者になるのか」という暗号のような言葉は、どんな意味をもっているのか。

裏面に何が隠されているのか判らぬまま疾走する暴力の渦、といった観あるストーリィ。その強烈な渦に引っ張られて読み通してしまったという印象です。
私の好みからは遠いストーリィですが、それでも本ストーリィの腕力を否定することはできません。
最近読んだ佐藤友哉「デンデラも相当にハードな小説でしたけれど、どこかにユーモア感がありました。それに対し本書は徹底して索莫とした感じ。それでもここまで徹底されてしまうと、引きずり込まれずにはいられない、ということでしょうか。

 


  

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