柴田哲孝作品のページ


1957年東京都生、日本大学芸術学部中退。2006年「下山事件・最後の証言」にて第59回日本推理作家協会賞および第24回日本冒険小説協会大賞、07年「TENGU」にて第9回大藪春彦賞を受賞。

  


 

●「狸 汁−銀次と町子の人情艶話−」● ★☆




2009年11月
光文社刊

(1500円+税)

 

2010/02/13

 

amazon.co.jp

港区麻布十番にある小料理屋の「味六屋(みろくや)」。
店の名前の“味六”とは、甘・酸・カン・苦・辛の五味+""の一味という。
3年前に開業したばかりの、夫婦と仲居一人で商う小さな店なのですが、入り口には「一見様御断わり申し上げ候」と仰々しく掲げ、知る人ぞ知る、といった名店。
流れ板の久田銀次がふるう料理の美味もさることながら、町子というその女房の色香もまた客を惹き付けている、という次第。

各篇の題名には物珍しい料理が並び、その料理が話題となるにはそれなりの人情話がある、ということなのですが、人情話よりも料理話にこそ妙味有り、というのがこの連作短篇集の楽しみでしょう。
もうひとつ、美人の女房=町子にとかく悪戯心あり、というか、やたら銀次を色っぽく挑発することしきり。
この艶かしいやりとりも、食に加えられた彩りということかもしれません。

グルメ+人情+艶話という連作短篇集。食に興味がないと、本書の楽しさは味わえません。

狸汁/初鰹/鯨のたれ/九絵尽し(くえづくし)/鱧(はも)落とし/鮎うるか

 


  

to Top Page     to 国内作家 Index