柴田錬三郎
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1917年−1978年。岡山県生、慶応義塾大学文学部卒。在学中「三田文学」に「十円紙幣」を発表。戦後編集者生活を経て51年「イエスの裔」にて第26回直木賞、69年「三国志英雄ここにあり」にて第4回吉川英治文学賞を受賞。56年から週刊新潮に連載を開始した“眠狂四郎”シリーズにより剣豪小説ブームを巻き起こす。

  


       

「花嫁首−眠狂四郎ミステリ傑作選−(末國善己編) ★★


花嫁首

2017年03月
創元推理文庫

(1111円+税)



2017/04/27



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時代小説の代表的ダークヒーロー、眠(ねむり)狂四郎が妖しい事件の解決に一役買ったミステリ趣向の短篇を選りすぐった“ミステリ傑作選”。
ちなみにこの眠狂四郎は、転び伴天連(バテレン)が武家娘を犯して孕ませ、その結果生まれたという人物。その望まれず生を受けた経緯から、虚無的で孤高、そして妖剣
“円月殺法”を遣う剣士というキャラクター設定です。

「眠狂四郎」は読んだことがなかったので丁度良い、と読み始めたのですが、冒頭から「
美保代」という登場人物の名前、狂四郎との関わりに何となく記憶があるなぁ、と。
読書録を確かめてみると、30年程前のある時期、続けざまに8冊読んでいました。まるで記憶の彼方でしたねぇ・・・。

眠狂四郎という特異なキャラクター、その眠狂四郎だからこその妖しい事件を集めた一冊。収録21篇とあって、たっぷり堪能できました。
中でも
「雛の首」「悪魔祭」は見逃せませんし、「湯殿の謎」「芳香異変」はまさに眠狂四郎らしい官能的な篇。
その一方、何度も登場する「美保代」という女性の名前は、主人公である眠狂四郎に十分拮抗するくらい忘れ難い人物像です。

なお、読んでいたことを忘れていた理由(言い訳がましいのですが)としては、私にとって眠狂四郎というとまず
市川雷蔵主演による映画「眠狂四郎」の印象が鮮烈だったから、と言えます。
虚無的な雰囲気を漂わせつつニヒルでふてぶてしさも感じさせる眠狂四郎像は、後にTVで片岡孝夫(現・仁左衛門)、田村正和という俳優さんも演じていますが市川雷蔵には遠く及ばないと思うばかりです。
また、円月殺法は文章で読むよりやはり映像で見たいもの。
※市川雷蔵については、
村松友視「雷蔵好みによく描かれていますので、良かったらどうぞ。

雛の首/禁苑の怪/悪魔祭/千両箱異聞/切腹心中/皇后悪夢像/湯殿の謎/疑惑の棺/妖異碓氷峠/家康騒動/毒と虚無僧/謎の春雪/からくり門/芳香異変/髑髏屋敷/狂い部屋/恋慕幽霊/美女放心/消えた兇器/花嫁首/悪女仇討/編者解説

  


  

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