司馬遼太郎作品のページ

  


 

●「風塵抄」 ★★☆




1991年10月
中央公論社刊

(1165円+税)

 

1992/01/08

読んでいる内にいつの間にかゆっくりと染み込んでくるような充実感がある。
とりわけ特別な話題を取り上げている訳ではなく、言わば身の周辺にある日常的に触れる事柄が殆どである。
くどく、強烈に自説を主張する訳ではなく、淡々とコメントを加えているといった風である。
つい、当方もあっさりと読み進んでしまうが、立ち止まってよく考えてみれば、どれも著者の歴史、文化への深い造詣に裏打ちされているものばかりである。

特に言葉の文化についてのエッセイが印象に残る。
日本人には欠けている魅力あるスピーチについて等。
・明治初期、福沢諭吉が言葉文化を高める為に演説館を作ったという話。
・欧米は姓が豊かなのに対して、名はキリスト教の聖人にあやかる場合が多いため、数に乏しいこと。キャサリン、カテリーナ、エカテリーナ、すべて読み方の違いに過ぎない。
・人間が機能に徹しすぎると、心は後退するという話。
・文明と経済の発展は、決して同一ではないこと、等々。

 

読書りすと(司馬遼太郎作品)  

 


  

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