|
|
1.最低。 2.春、死なん |
「最低。」 ★★ | |
2017年09月
|
紗倉さんのデビュー作にして、2017年に映画化。 AV女優4人を描いた連作とのことで、身近な題材をまず取り上げたのかと思いましたが、それはともかくとして、予想を超えて良かったです。 本作を評価するかどうかは結局、AV女優ならびにAV仕事を、淫乱あるいは卑猥な仕事と思いながら読むか、普通の人、数多くある仕事のひとつとして読むか、次第なのではないでしょうか。 私は後者の気持ちに立って読みましたので、それぞれの人間模様や心情がリアルに描き出されていて、読み甲斐のある連作短編集と感じました。 ・「彩乃」:美容専門学校に通う20歳の女性。たまたま知り合った男がスカウト兼AV男優。誘われるままに石村のプロダクションでAVデビュー。それを知った母親と姉が怒り・・・。 ・「桃子」:勤務先が倒産、たまたま知り合った男から誘われAVプロダクションを起業。男がAV女優として送り込んできた桃子と一緒に暮らすうちに・・・。 ・「美穂」:夫とのセックスレスに鬱屈を抱える主婦、35歳。夫のDVDを観て、夫に知らせないままAVデビュー。 ・「あやこ」:祖母、母との3人暮らし。中学生になり、母親にAV出演した過去があるという噂が学校内に広がり、祖母、母親に不信感を抱く。 1.彩乃/2.桃子/3.美穂/4.あやこ |
「春、死なん」 ★★ | |
2023年04月
|
小説刊行が続いている紗倉まなさん、まずは第42回野間文芸新人賞(2020年)候補となった表題作を含む本書からと思い、読んだ次第です。 候補作「春、死なん」と、「ははばなれ」の2篇収録。 共に“老人の性”をテーマとしていますが、「春」の主人公はその本人である畠山富雄(70歳)、「はは」では娘コヨミ(26歳)の視点から“母親の性”を描くという構成。 “70歳の老人”というと、世間はどう見ているのでしょうか。 <老人>という種族がいると思われているのではないか、と思うのですが、現実としてそのような転移が行われるようなことはなく、普通に生きてきて年齢を重ねた、というだけのこと。 今までの自分の延長であり、別の人間あるいは別の種族になる訳ではありません。 そう踏まえて考えれば、富雄の行動も、コヨミの母親の行動も、同じ世代からすればそう驚くことではありません。 老人の性を描いた小説というと谷崎潤一郎「瘋癲老人日記」が挙げられると思いますが、私が強い印象を受けた作品としてはむしろ、谷川俊太郎「母の恋文」の方が思い浮かびます。 あまり描かれていないであろう老人の性という問題を、心と身体は結びついたものとして描いた処に新鮮な視点を感じますし、若い紗倉まなさんが小説の題材として取り上げた処に面白味と興味を感じます。 紗倉さんの他の作品も読んでみようと思います。 ※なお、70歳くらいの人は今、もっと若いです。私からすると富雄、80歳くらいの印象を受けますね。もっとも人によって違う、とは思いますが。 春、死なん/ははばなれ |