桜井鈴茂
(さくらい・すずも)作品のページ


1968年生、北海道出身、明治学院大学社会学部社会学科卒。卒業後は、音楽活動ほか職歴多数。同志社大学大学院商学研究科中退。2002年「アレルヤ」にて第13回朝日文学新人賞を受賞。

  


       

「できそこないの世界でおれたちは Together In This Fucked Up World ★★


できそこないの世界でおれたちは

2018年04月
双葉社刊

(1400円+税)



2018/06/17



amazon.co.jp

「できそこないの世界」という表題ですが、意味を翻訳すれば、できそこないの俺たちが見ると世界は・・・ということではないかと思います。

かつてはパンクロックバンドでヴォーカル兼ギタリストだった
吉永シロウも今は40代半ば。離婚し、しがない下請けコピーライターの身。
そのシロウの元に、かつてのバンド仲間で、今は紅白歌合戦にも出場しようかという程の人気バンドで活躍中の
ドラム(上田健夫)から呼び出しがあり、久しぶりの再会。
そこから、あれよあれよという間に、次々と昔の仲間だった男性や女性たちとの再会が続き、紆余曲折をあった上でのことなのですが、昔の仲間や新たな友達を集めて一夜限りのバンド演奏をしようという流れにストーリィは進んでいきます。

軽薄調の一人語りでストーリィは綴られていきますが、だからといって主人公が軽薄極まりない人物かというと、そんなことはありません。
別れた息子への愛情をちゃんと持っているし、養育費も何とか払い続けているし。
でも、シロウもドラムも、バンド時代に好きだった相手への気持ちを今も引きずって忘れていない。・・・・というか、その時からちっとも成長してない、と言うべきか。

本作は、あの頃と変わらず今もガキのままであるシロウやドラムを主人公にした、再来青春記といって良いストーリィ。
愚かさもありますが、可愛げも、人の好さもあり。だからこそ今もなお人にも好かれるし、思い切った行動で人を喜ばすこともできるのでしょう。

中年になったからといって、二度と青春は戻らず、と決めつける必要はないのかもしれません。
大人も子供も中年も、理屈を超えて、皆が仲良く元気になれるストーリィ。 一言、理屈を放って、楽しいです!

1.アレルヤをもう一度/2.予期せぬ再会/3.一日遅れのクリスマスパーティ/4.わずかに残されたおれたちにできること/5.フクザツな心境/6.隣の芝生/7.さまよう牛たち/8.できそこないの世界

   


  

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