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「塀の中の美容室 Beauty Salon in Prison」 ★★☆ | |
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刑務所内にあり、受刑者が美容師を務める<あおぞら美容室>。 その塀の中にある美容室を舞台にした連作ストーリィ。 相当に特異な舞台設定と言って良いでしょう。 当然ながらそこを訪れる人、利用する人の事情も様々、といった視点からなる連作ストーリィと思い込んだのですが、そんな単純パターンのものではありませんでした。 まずは定石通り、客は様々。人が様々というより、塀の中の美容室を利用しようとする理由が様々。 そうした中で、受刑者が美容師になることがそう簡単ではないこと、必然的な条件もあることが語られていきます。 刑務所内で仕事をする側の人たちのことも描かれます。刑務官は当然ながら、刑務所内の美容学校で講師(技官)を務める元美容師もまた、主人公の一人となります。 そして、たった一人の美容師である受刑者の事情も明らかになっていきます。 一冊の中に多くの人のドラマがあり、その中で一歩一歩前に向かって歩こうとする受刑者の姿も描かれる。 連作短篇集という形式の面白さ、魅力、その良さを存分に発揮した作品と言って過言ではありません。 最後のエピローグでは、学校の卒業式を終えた時のような清々しさ、これからの明るい未来を感じさせられます。 新たに再スタートを切ろうとする人たちへ、心からのエールを贈りたくなる一冊。是非、お薦めです。 1.芦原志穂/2.鈴木公子/3.加川実沙/4.一井彩/5.藤村史佳/6.小松原奈津/エピローグ |