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「五年後に」 ★★ 小説推理新人賞 | |
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小説推理新人賞を受賞した表題作「五年後に」を含む4篇からなるデビュー短篇集。 4篇とも主人公が中学教師である点が特徴です。 ・「五年後に」:主人公は30代半ばの女性教師=安崎華。 女子生徒から告白された若い男性教師、「五年後に言ってくれたらもっとうれしいのに」とその生徒に答えたのだという。 それと同じ言葉を、かつて夫が口にしていた。その真意は何だったのだろう。そして、その言葉によりどんな結果がもたらされたのだろう。 自分勝手で不用意な一言は、時によって人に大きな悲劇をもたらすことがある。その事実に気持ちが震えるような気がします。 ・「渡船場で」:主人公は46歳の教師=結城航平。 仕事で忙しい妻の紘子との溝が広がるばかり。そんな航平の気持ちを救ったのは、学校帰りに寄る渡船場で出会う老女との会話だった・・・。 ・「眠るひと」:主人公は教師の藤枝泰子、78歳の母親と二人暮らし。その母親が末期癌で入院する、動揺したのは母親自身より泰子。40年前、母親が黙って家出し2日間戻らなかったことがある。その時母親は、誰の元へ行ったのか・・・。 ・「教室の匂いのなかで」:主人公は森野浩輔。 担任クラスの中で村雨恭斗と古内拓は友人同士だった筈なのに、今や拓は恭人らにイジメられているのか? 自分は教師として何をすべきなのか。ふと自分の中学時代のことを振り返り・・・・。 各主人公自身の人生ドラマと共に、受け持ち生徒の問題にどう向き合えば良いのか、という迷いが描かれます。そしてまた、そこには、自分が同世代だった頃への回想と葛藤があります。 結局、生徒たちは夫々、自分の力で乗り越えなくてはいけないのでしょうか。教師ができるのは、その時傍にいてあげることくらいなのでしょうか。 「五年後に」と「教室に匂いのなかで」の2篇が、印象深いものでした。 五年後に/渡船場で/眠るひと/教室の匂いのなかで |