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「がらんどう」 ★★☆ すばる文学賞 | |
2025年03月
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ルームシェアって、若い人たちだけの特権なのでしょうか。 友人の菅沼からルームシェアの提案を受けた時、主人公の平井佐和子が示した反応が「若い人たち同士ならわかるけど・・・本気なの?」というもの。 でも、少しでも広い部屋に住みたいから負担家賃を抑えるための方法としてのルームシェアは、十分合理的でなんらヘンということはないと思います。 システム会社勤務勤務の傍ら、注文を受けて死んだ飼い犬のフィギュア作成を副業でやっている菅沼。小さな印刷会社に勤務し、男性に恋愛感情を持てないままでいる平井。お互い38歳での同居生活スタート。 お互いに通じ合っているところもあれば、相手に隠しているところもありと、年齢相応に複雑です。 2人が同居するまでに、それぞれ様々な道のりがあった、というのは当然のこと。 それが洩れ出していくようなストーリィ展開であり、そこに切なさもあり、同時にコミカルな面も感じます。 求めても得られることはないという確信、でも求めてあがかずにはいられない。そんな時、一人ぼっちでいるより、誰か傍にいてくれたらどんなに救いになることでしょう。 平井と菅沼、2人の同居生活にはそんな雰囲気を感じます。 当たり前のようであって、でもどこか不穏さもあり、そこに切なさもあればコミカルさもある、というストーリィ。 説明はさておき、2人の関係はなにやら楽しく、ストーリィは読んで面白く、魅了される作品です。 お薦め。 |