大江健三郎作品のページ


1935年愛媛県生、東京大学仏文科卒。1958年「飼育」にて芥川賞を受賞。在学中に94年にノーベル文学賞受賞。

 
※私が大江作品を読んだのは、中学から高校にかけての頃。「芽むしり仔撃ち」「個人的な体験」「性的人間」「セヴンティーン」等を読みましたが、到底理解していたとは言えません。

  


 

●「二百年の子供」● ★★

 

 
2003年11月
中央公論新社

(1400円+税)

2006年11月
中公文庫化

  

2004/01/20

大江作品を読むのはまさに30年余ぶりですが、「私の唯一のファンタジー」という言葉に誘われて読むに至りました。

知的障害のある真木16歳、小学校6年生のあかり、5年生のという3人兄弟が、過去と未来 200年を行き来するストーリィ。
四国の森の中にある千年スダジイ、その根元のうろに入って会いたい人、見たいものを願いながら眠ると、会いたい人、見たいものの所へ行ける、という言い伝えがあります。曰く“夢見る人のタイムマシン”。とは言っても、本作品は決して冒険物語ではありません。
その3人の好きな言葉は、「ながもち」、「あんぜん」、「むいみ」だと言います。3人共、相当な現実論者のようです。
ところが、過去で彼等が出会った人は、 120年前の江戸時代、逃散した農民救済の先頭に立った少年メイスケであり、女子して初めて米国留学したむめ(津田塾創始者・津田梅子?)と、いずれも勇気と気概をもった子供たち。
時代を超え、大江さんが子供たちに共通して託そうとするのは、願いをもつこと、新しい道を開こうとすることへの期待、ではないかと思います。
帯文句にある「新しい人」とは、子供たちがその期待に応えた後の姿でしょう。大江さんらしく、ちと理念的な作品。でも、3人を見守る大人たちの優しい視線と歩調を合わせるかのように、堅苦しくなくゆっくりとしたテンポで進む物語です。
※挿絵の父親画が、大江さんにそっくりであるのが微笑ましい。

 


  

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