大島昌宏作品のページ


1934年福井県福井市生、日本大学芸術学部映画学科卒。広告制作会社に勤務し、多くのテレビCMを制作。92年「九頭竜川」にて第11回新田次郎文学賞を受賞し、作家活動入り。94年「罪なくして斬らる−小栗上野介−」にて第3回中山義秀文学賞を受賞。

  


 

●「そろばん武士道」● ★★




1996年02月
新潮社刊
(1650円+税)

2000年04月
学陽書房文庫



1996/04/05



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幕末近く、禄高四万石だというのに八十万両もの借金を抱えている越前大野藩
このままではどうにもならないと藩主・土井利忠が起死回生の藩政改革を決意し、その改革の担い手として採用したのが内山七郎右衛門
それまで銅山方御用を務めてきた七郎右衛門の得意とするところは、算盤。
さっそく大胆な倹約策を上申すると共に、理財の才能を発揮し、債権主である商人たちに対し一歩も引けをとらずに借金返済交渉を進めていく。目標は、20年での全額完済!

とても武士とは思えない、見事な交渉振りを発揮するものの、本書の面白さはまだまだこれから。
商人に引けをとらないどころか、債権者でもある大阪の大店の元へ足を運び、商売のコツ会得のために無償奉公まで始めるのですから。
七兵衛として重ねた経験を元に、大野藩の産物を数多く販売するための藩直営店・大野屋まで開業。
さらに特産物の生産奨励、流通ルートの拡大、さらには蝦夷地開拓までと大車輪の活躍をみせ、見事に藩財政を再建してみせた七郎右衛門の軌跡は目を見張るばかり。一連の改革ストーリィは、すこぶる面白いという一言に尽きます。

武士とか商人とかにこだわらず、今の時代に何が必要かを理詰めにとらえ、経済を見据えて果敢に行動したその姿は、明治維新の功労者にも劣らない改革者と言って過言ではないでしょう。
現代の経済小説にも通じる、読み応えある歴史小説です。お薦め!

 


  

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