
2015年09月
光文社刊
(1600円+税)
2018年10月
光文社文庫化
2015/12/10
amazon.co.jp
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小説宝石新人賞優秀賞を受賞した表題作「カプセルフィッシュ」から始まる連作短篇集。
冒頭、28歳ののりこと小学3年生のぱちここと喜多美遊子が、特に言葉を交わすでもなく、海辺に2人で並びずっと海を眺めているシーンから始まります。
主人公ののりこは、会社の同僚と不倫、妊娠、流産、捨てられて退職。半年間のヒキコモリを経て、祖母のいるこの土地へ逃避してきた女性。
一方のぱちこは、フィリピン人である母親が男と出ていき、離婚した父親と2人暮らし。
信じていたもの、生きる杖にしていたものに裏切られ、捨てられたという傷、孤独を抱えている点で、のりことぱちこの2人には共通点があります。
そんな2人でも、のりこの祖母の家で、並んで祖母の手料理を食べているシーンは、とても嬉しそうです。
2人にもそうやって気持ちをほぐらすことのできる場所があるということに、心に突き刺さった棘の痛みと共に僅かな温もりを感じる気がします。
こうした場所があるのなら、今の閉じこもったような状況から何処かへと、いずれ2人は足を踏み出していくことができるのではないか、という救いを感じる思いです。
痛みと温もりの合わさった清新な感触が、本作品の魅力。
「迷える蟻の行列」は、ぱちこを主人公にし、ぱちことのりこの他に大樹と菊池という2人を加えた続編。
「結婚病」は東京に戻ったのりこの、婚活パーティ体験。
そして「静寂に寄せる波」と「風の葬送」は、冒頭2篇のアフター物語。
年齢差を超えた、のりことぱちこの繋がりが愛おしい。
カプセルフィッシュ/迷える蟻の行列/結婚病/静寂に寄せる波/風の葬送
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