岡部えつ
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1964年大阪府生、群馬県育ち。2008年に「枯骨の恋」にて第3回「幽」怪談文学賞短編部門大賞を受賞し、翌年同作を表題とした短編集「枯骨の恋」にて作家デビュー。


1.生き直し

2.
フリー!

 


           

1.
「生き直し ★☆


生き直し画像

2013年09月
双葉社刊
(1500円+税)



2013/10/20



amazon.co.jp

主人公の相原真帆は、Q県が主催した伝説民話小説賞で大賞を受賞し、招かれてQ県を訪れます。
受賞作品は、かつて真帆が少女時代を過ごしたQ県火海町で、中学の自由研究部の活動として集めた貉穴に関する伝承話を土台としたもの。
そこから真帆の小学校〜中学校時代の回想と貉穴に関する伝承話が絡み合いながら語られていきます。本書はまるで、イジメという社会構図、その仕組みを描いているかのようです。

真帆が都会の小学校から転校したのは、クラス内のイジメ問題に絡んで糾弾される側に回ったため。それから逃れるようにして母親と2人火海町へ引っ越し転校した次第なのですが、その火海町の小学校でも再び真帆はイジメの対象として祀り上げられることになります。

イジメとは現代の小中学校だけではなく、過去の日本においてもずっと在ったもの。社会があればそこには階層があり、その階層故に差別、イジメがある。そうした階層があるのは現代の小中学校でも同じこと。イジメとは人間社会があれば当然に在るものに過ぎない、本作品はそう語っているようです。
だとしたら、イジメに遭った人間はどう対処したらいいのか、どうすればそこから逃げられるのか、救われるのか。それともそんな解決を求めるだけ無駄なのでしょうか。
問題はイジメに無関心な傍観者の存在なのか。イジメに耐えるには逃げず、正面から受け止め続ける以外にないのか。
読了後はその解決方法を見い出せないままに、暗澹たる気持ちが残ります。

                         

2.
「フリー! ★★


フリー!

2016年05月
双葉社刊

(1400円+税)

2018年07月
双葉文庫化



2016/07/15



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緑川千春、37歳。中堅食品メーカーの子会社である広告代理店でデザイナー。
景気低迷で社員数も削減、他社から途中入社してきた部長のおかげで仕事はもはやブラック状態。そのうえさらに・・・。
思いも寄らぬ時期に、収入面でも極めて不利な状況で退職せざるを得なくなった千春が直面したのは、生活難。
つい苛々する余り、3歳年下の恋人=
昭人との関係もギクシャクし始め・・・。

ちょっと階段を踏み外したと思ったら、転がるように全てが悪い方へ、悪い方へと落ちていく・・・そんな千春が主人公。
正社員を退職、ハローワークへ通えども次は仕事が見つからず、フリーター、バイト等々。
その一方、かつて親ほども年齢差もある恋人から教えられたバーが“drop”。そこは千春にとって大事な隠れ場所、そして憩いの場所。ところがその場所で知り合った人によって千春の新たなチャンスと別れが開かれようとは・・・。

落ちるところまで落ちてしまった観ある主人公が、挫折と焦慮に身悶えしつつ、そこから新しい道を掴むまでのストーリィ。
主人公の苦しさは、まるで踏んだり蹴ったりという具合の展開にあるのですが、それを乗り越えて浮上するには何が必要なのか。

本書から、自分を落すのも、自分を浮き上がらせるのも自分自身である、と告げられているように感じます。
さて、最後に千春は自分の幸せをつかむことができるのか。
それは読んでのお楽しみです。


1.ドロップ/2.出会い/3.秘密/4.齟齬/5.フリー

           


   

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