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1.生き直し 2.フリー! 3.怖いトモダチ |
1. | |
「生き直し」 ★☆ | |
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主人公の相原真帆は、Q県が主催した伝説民話小説賞で大賞を受賞し、招かれてQ県を訪れます。 真帆が都会の小学校から転校したのは、クラス内のイジメ問題に絡んで糾弾される側に回ったため。それから逃れるようにして母親と2人火海町へ引っ越し転校した次第なのですが、その火海町の小学校でも再び真帆はイジメの対象として祀り上げられることになります。 イジメとは現代の小中学校だけではなく、過去の日本においてもずっと在ったもの。社会があればそこには階層があり、その階層故に差別、イジメがある。そうした階層があるのは現代の小中学校でも同じこと。イジメとは人間社会があれば当然に在るものに過ぎない、本作品はそう語っているようです。 |
「フリー!」 ★★ | |
2018年07月
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緑川千春、37歳。中堅食品メーカーの子会社である広告代理店でデザイナー。 景気低迷で社員数も削減、他社から途中入社してきた部長のおかげで仕事はもはやブラック状態。そのうえさらに・・・。 思いも寄らぬ時期に、収入面でも極めて不利な状況で退職せざるを得なくなった千春が直面したのは、生活難。 つい苛々する余り、3歳年下の恋人=昭人との関係もギクシャクし始め・・・。 ちょっと階段を踏み外したと思ったら、転がるように全てが悪い方へ、悪い方へと落ちていく・・・そんな千春が主人公。 正社員を退職、ハローワークへ通えども次は仕事が見つからず、フリーター、バイト等々。 その一方、かつて親ほども年齢差もある恋人から教えられたバーが“drop”。そこは千春にとって大事な隠れ場所、そして憩いの場所。ところがその場所で知り合った人によって千春の新たなチャンスと別れが開かれようとは・・・。 落ちるところまで落ちてしまった観ある主人公が、挫折と焦慮に身悶えしつつ、そこから新しい道を掴むまでのストーリィ。 主人公の苦しさは、まるで踏んだり蹴ったりという具合の展開にあるのですが、それを乗り越えて浮上するには何が必要なのか。 本書から、自分を落すのも、自分を浮き上がらせるのも自分自身である、と告げられているように感じます。 さて、最後に千春は自分の幸せをつかむことができるのか。 それは読んでのお楽しみです。 1.ドロップ/2.出会い/3.秘密/4.齟齬/5.フリー |
「怖いトモダチ」 ★☆ | |
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人気エッセイスト=中井ルミンの正体は、善か悪か? 誰なのかは明らかにされませんが、中井ルミンを知る16人の人物に聞き込み、ルミンの真の姿を明らかにしようとします。 その人物は何者か、そして何のために聞き込みをしているのか。それもまた謎ですが、ルミンのファンあるいは尊敬していると回答する人物もいる一で方、あれは悪魔、関わらない方がいい人物だと回答する人物たちもいる。 どちらが中井ルミンの正体なのか。その謎解きは読者の手に委ねられます・・・・というのはちょっと大袈裟かも。 いずれにせよ、中井ルミンに対する人物評が正反対、というところが面白味。 さらに、その間に挟まれている中井ルミンのエッセイ部分が、何と不気味なことか。 人物評が正反対というストーリーを描いた作品として忘れ難いのは、有吉佐和子「悪女について」。 最初TVドラマで知り、次いで原作を読んだものですが、同作のような凄みは本作にはなく、コメディ要素がかなり高いという印象です。 それにしても、こうした人物が近くにいたとしたらたまったものではありません。そうなったら、ただ逃げるのみ、でしょう。 1.隆くんママの話−その1/2.ユウキくんママの話/3.中井ルミンのエッセイ「オンライン・サロンで幸せになろう」/4.元サロン会員Sの話/5.大石キラリの話−その1/6.中井ルミンのエッセイ「マウント」/7.優美の話−その1/8.香里の話/9.沙世の兄の話/10.富野道隆の話/11.沙世の話/12.中井ルミンのエッセイ「謝罪と許し」/13.岡田渡の話/14.笹井常子の話/15.野村千里の話/16.馬場紹子の話/17.中井ルミンのエッセイ「好意と尊敬」/18.堂本江梨の話−その1/19.倉田友昭の話−その1/20.中井ルミンのエッセイ「勝手な期待」/21.白川敬の話−その1/22.優美の話−その2/23.大石キラリの話−その2/24.チャコのYouTubeチャンネル「自己愛性パーソナリティ障害の巻」/25.倉田理美さん追悼文集への中井ミルンの寄稿「倉田理美さんの愛」/26.倉田友昭の話−その2/27.わたしから中井ミルン宛ての手紙/28.森葵からの手紙/29.白川敬の話−その2/30.隆くんママの話−その2/31.堂本江梨の話−その2/32.中井ルミンのエッセイ「友だち」 |