野田道子
作品のページ


1937年兵庫県生、大阪市立大学卒、児童文学作家。

 


   

●「点子ちゃん」●(絵:太田朋) ★★




2009年09月
毎日新聞社刊

(1300円+税)

  

2009/10/25

 

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小学4年生の一平のクラスに転校してきたのは、色白でつむった目も優しそう、まるで妖精のような印象の女の子、泉川カレン。でも、彼女は全盲だった。

“点子ちゃん”といえば、まずケストナーの名作点子ちゃんとアントン。本書に興味を持ったのも、その名作と題名が同じだったから。
ケストナーの点子ちゃんは生まれた時とてもちっちゃな女の子だったことから付けられた愛称でしたが、本書の点子ちゃんは、いつも点字の本ばかり読んでいるのでアメリカの日本人学校で付けられた仇名だというのが、本人の説明。
本書の点子ちゃん、全盲というハンデはあるものの、明るくハキハキして、物怖じするところはまるでない、聡明な女の子。
そんな点子ちゃんと隣りの席になった一平が、彼女と触れ合うことによっていろいろなことを学んだ一学期を描く、絵本ストーリィ。

見ることはできないけれど、その代わりに点子ちゃんは、目が見える人ができない多くのことを感じ、音を聴くことができる。
点字の本やテープを聞くことによって、沢山の物語を知っているし、本を読むことも大好き。
点子ちゃんが祖父母と暮らす古い家を訪れた一平が、縁側で点子ちゃんと一緒にだまって本を読んでいる光景、本好きとしては胸温まる場面です。
小学校恒例の、お寺に泊まりこんで肝試しを行なわれるという行事。そこで一平が心配していることを、点子ちゃんは「わたしがなんとかする」と請け負い、その通り尽くしてくれる。
そのお寺でクラスの皆を前に、点子ちゃんが披露した怪談話。
それもまた胸熱くなる場面。
全盲というハンデはあっても、決して不幸とは限らない、人間として他の女の子とまるで変わるところはない。そのことを一平とともに読み手も改めて得心するところが、本書の良さです。

※ちょっと三宮麻由子さんのことを思い出していました。

 


   

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