仁志耕一郎
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1955年富山県生、東京造形大学卒。広告制作会社等でアートディレクター・CMプランナーを務める。2012年「玉兎の望」にて第7回小説現代長編新人賞、「無名の虎」にて第4回朝日時代小説大賞を受賞し作家デビュー。13年上記2作にて第2回歴史時代作家クラブ賞新人賞を受賞。

  


     

「玉繭の道 ★★


玉繭の道画像

2013年10月
毎日新聞社刊

(1600円+税)

   

2013/11/16

   

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家康の御用商人として活躍した茶屋四郎次郎を描いた歴史時代小説。
前半はいきなり、
本能寺の変により落ち武者狩りの危険の最中、伊賀越えにより脱出しようとする家康一行に随行し、共に苦難を味わった道中が描かれます。
歴史的にその結果は明らかになっていますが、その道中の詳細な物語はやはりサスペンスに満ちていて面白さ十分。
後半は天下人となった
秀吉と家康の間に挟まれ、京の呉服問屋商人として苦汁を味わう顛末が描かれます。二度にわたる秀吉と四郎次郎との対面は、命を賭しての勝負、共に惨事を味わった2人の人物の対峙と状況は大きく異なりますが、後者は本書中で白眉の場面と言って良いと思います。

かつて白石一郎「海将-若き日の小西行長-」を読みましたが、商人から武将に転じた小西行長と、“商人侍”と仇名されたものの最後には商人の道を選びとった中島四郎次郎の姿は対照的なものかもしれません。

本能寺の変から始まり、秀吉と家康の対立~秀吉天下という大きな時代の変遷を背景にした物語としてはあっという間に読み終わってしまう作品ですが、最後に示される四郎次郎の商人としての矜持には、清々しいものを感じさせられて、読後は気分爽快。

 


  

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