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1.リトルガールズ 2.恋愛の発酵と腐敗について |
「リトルガールズ Little girls」 ★★☆ 太宰治賞 | |
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ストーリィを一人称で語る登場人物が次々と登場します。 その辺りの加減が実にテンポよく、楽しい。 55歳になってやっと自分の好きな服装ができると、突然ピンクのヒラヒラ服を着始めた女性教師の大崎雅子。 その女性教師を唐突に「きれいです」と言ってのけ、絵のモデルを頼み込む美術担当の代替教師の猿渡壮太。 異性を好きという感覚がまだ分からない沢口桃香、その幼馴染で桃香を大事に思っている瀬波勇輝、好きな相手に告って引かれる不安を抱いている浅羽小夜、という3人は中学2年生。 それ以外にも、好きな相手との恋愛を自由に楽しんでいる桃香の母親である夕実等々、様々な人物が登場します。 それらの登場人物から感じられるのは、そのしなやかさです。 他人の言動に惑わされず、自分の気持ちを素直に現して飛び込んでいく、相手にぶつかっていく。 そんな彼らが、思いがけない人と関わり合うことによって、新たな発見、新たな道を見出していくストーリィ。 彼らのしなやかな姿が、実に魅力的です。 それと対照的に、彼らの周囲でただ固まってしまっているだけのように思える人々もいます。 こうした人間にはなりたくないなぁ、と心から感じるばかり。 予想外の面白さ、魅力を内に秘めている一冊。 表紙の絵の意味は、本ストーリィを読めばわかります。きっと景色が違って見えてくるようになる筈です。(笑顔) 四月/五月/六月/終業式/夏休み/八月/登校日/夏の終わり/九月/文化祭/十二月 |
「恋愛の発酵と腐敗について」 ★★ | |
2023年08月
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4年間も続いてしまった不倫関係に見切りをつけ、会社を退職して念願の喫茶店を開いた万里絵・29歳。しかし、売り上げ実績は苦戦。 そこに現れたのがパン職人の神谷虎之介。虎之介が焼くパンを仕入れたところ、美味しいと評判になり売り上げ好調。 一方、9年前に夫が死去して一人暮らしの早苗・43歳は、スーパーでレジ打ちパート。その早苗がどういう訳か11歳も年下の虎之介に嵌ってしまい、毎日虎之介のところに押しかけずにはいられない。 しかし、その虎之介、元々寄ってくる女性にだらしななく、これまでにも散々前科あり。さらに、22歳も年上の妻・伊都子が近所でスナックを経営しているといった具合。 早苗の虎之介に対するセックス狂乱に万里絵、さらに伊都子や万里絵を想う酒屋二代目の三上・40歳まで巻き込まれる、というドタバタ劇。 ドロドロした男女関係ストーリィは好きではないのですが、本作の最後には、カラッと笑える雰囲気になってしまうのですから、大いに楽しい。 思えば、騒動の種になる男などいない方が、女たちは協力し合って居心地の良い場所を作れるのかもしれません。 戯曲的な面白さをもった、万里絵、早苗らを軸にした居場所作りストーリィ。 万里絵の願いを籠めた<紅茶の店マリエ>が、どんどん変貌していくところも愉快。 錦見さん、ストーリィのまとめ方が実に上手い! 1.万里絵/2.早苗」/3.万里絵/4.早苗/5.万里絵/6.早苗/7.万里絵/8.早苗/9.万里絵/10.三上/11.万里絵/12.女たち/13.三上/14.万里絵 |