西田征史作品のページ


1975年生、東京都出身。脚本家、演出家。

  


     

●「小野寺の弟・小野寺の姉」● ★★☆




2012年03月
泰文堂刊

(1200円+税)

  

2012/05/26

  

amazon.co.jp

木造一軒家に2人で暮らす、弟=小野寺進(33歳)、姉=小野寺より子(40歳)の姉弟。
当然の如く2人とも独身、弟は引っ込み思案な性格であり、姉はそれと対照的に思い込みの強いタイプ。
いい歳でありながら未だ独身で、姉弟の2人暮らしという現状は、各々キャラクターの必然的な帰結かと思えます。
弟、姉を交互に第一人称の主人公としながら、2人のごく平凡な日常生活を描いていく8章から成る長篇小説。

お互いに対照的な性格であるが故に、2人のやり取りにはコミカルな味あり。この姉にしてこの弟あり、その結果として未だ独身、2人暮らしという風です。
もっとも、弟の進にはかなり濃い仲の恋人が過去にいたようで、進は未だに別れた恋人の面影を引きずっているらしい。

しかし、徐々に明らかになっていくのです。進とより子それぞれが、自分の姉・弟のことをどんなに大切に想っているか、ということが。
表舞台で演じられていた物語は、いつのまにか舞台が一転し、裏舞台での物語がふたを開けていた、という風です。
この2人の、姉弟関係が実に良い、決して格好良くはないのですが、素晴らしいと言いたい。
「小野寺の弟・小野寺の姉」という題名、なんとなくユニークと感じていただけなのですが、2人の互いへの強い想いを端的に語っていたとは、最後になって気づくこと。
ちょっと珍しい、家族小説の逸品です。お薦め。

※小説としても十分見事なのですが、劇として舞台で演じられたらさぞ楽しいだろうなぁと思う次第。

1.「歯に挟まっているから、とうもろこし」/2.「お二人様なの」/3.「おにぎりにカルピスは合わないだろ」/4.「だったら自分で選びなさいよ」/5.「ありがとう・・・サンキュー・・・おおきに」/6.「何か手伝うことありますぅ?」/7.「えーと・・・・どういうこと?」/8.「ごめんね」

 


  

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