中野順一作品のページ


1967年静岡県浜松市生、早稲田大学教育学部卒。現在中央法規出版勤務。「セカンド・サイト」にて2003年度サントリーミステリー大賞を受賞。

  


 

●「セカンド・サイト」● ★☆   サントリーミステリー大賞

 


2003年5月
文芸春秋刊

(1429円+税)

2006年4月
文春文庫化

 

2003/07/08

キャバクラを舞台に、キャバクラのボーイを主人公、そのうえ予知能力を持つキャバクラ嬢が登場するという設定が、斬新な魅力をもった作品です。
キャバクラという風俗産業の裏舞台を覗き込む面白さもありますが、主要な登場人物がすべてキャバクラの関係者という構成がお見事。

ストーリィは、キャバクラ嬢が連続して暴漢に襲われ、そして遂に主人公の勤める店の人気bPキャバ嬢が殺害されるという事件が発生するというもの。
この主人公・タクトが、事件の真相をつかもうと後先考えずに突っ走ってしまうのですから、読み手もどんどんストーリィの中に引き込まれます。そのテンポの良さが楽しい。
そしてもう一人、事件の重要な鍵を握るらしい、予知能力をもったキャバ嬢・花梨の存在が秀逸。
ただ、タクトの中で花梨のイメージが膨らむ一方の割に花梨自身の活躍する部分は少ないこと、終盤の迫真性がやや不足しているところに、ちと物足りなさが残ります。
とはいえ、読み始めると止まらない、充分な面白さあり。

※風俗業の探偵ものに、かつて都筑道夫「トルコ嬢シルビアの華麗な推理」という安楽椅子探偵型がありましたが、それに対し本作品はサスペンス・ミステリ型。
※※また、たまたまですが、予知能力ある女性が登場するミステリという点で、内田康夫「ユタが愛した探偵」と連続する結果となりました。

 


  

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