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「狭間の者たちへ」 ★★☆ | |
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「狭間の者たちへ」の主人公は、藤原祐輔、40歳くらい。保険代理店で一応、店長。 しかし、部下管理も店の業績も順調とは言えず、家に帰れば赤ん坊の世話に苛立つ妻から怒声を浴びせられる日々。 そんな状況の中で主人公が求めた癒しは、早番の通勤電車で一緒になる女子高生、その甘い匂いを嗅ぐこと。 まぁ、ストレスが溜まり続ける中、何かに救いを求めたいという気持ちは、家庭持ちサラリーマンとして分かる、という処があります。 しかし、この主人公、少しでも前向きになれるよう努力しているのかと言えば、そこは疑問。 でも、この主人公と自分自身、大きな違いがあるかといえばそんなことはなく、ほんのちょっとした違いに過ぎないと思えます。 ですから、他人事とばかり思えず、リアルに恐ろしい。 新潮新人賞を受賞したデビュー作「尾を喰う蛇」は、総合病院に介護福祉士として勤務する小沢興毅、35歳の独身。 ただでさえキツく、苦労ばかり多い仕事なのに、正規職員は増やしてもらえず、パート職員からのしわ寄せはすべて受けざるを得ない。 とても私には務められるとは思えない仕事ですが、恋人にも去られていて、楽しみもなく、そもそお楽しみに使う時間すらない、という過酷な状況。 救いがないという点では、「狭間の者たちへ」の主人公と同類と言えます。また、自分から動こうとせず、ただ流されているだけという点においても。 しかし、もし自分が同じような立場に置かれれば、主人公と同様の行動をとらずにいられる自信はない・・・。 藤原祐輔と小沢興毅、この先浮かび上がれるのか、それとも深く沈んでいくだけなのか。 それが見当つかないだけに、読後感は重く心に残ります。 狭間の者たちへ/尾を喰う蛇 |