村木美涼(みすず)作品のページ


1967年宮城県生、「窓から見える最初のもの」にてアガサ・クリスティ賞大賞を受賞。


1.窓から見える最初のもの

2.箱とキツネと、パイナップル

 


                   

1.

「窓から見える最初のもの ★☆   アガサ・クリスティ賞大賞


窓から見える最初のもの

2017年11月
早川書房刊

(1600円+税)



2018/01/01



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4人の主人公による4つの物語が、並行して語られていくという構成からなる作品。

・心療内科クリニックに通う短大生の
相沢ふたばは、そこで湯本守という大学生と知り合います。ほのかなロマンスが生じるというストーリィですが、クリニックでそんな患者はいませんと言われてしまう。湯本守という人物はふたばの妄想だったのか。
 
・壁紙販売会社の社長である
藤倉一博は、注目していた画家の幻の油絵<六本の腕のある女>を入手し胸躍らせますが、贋作という疑いが生じ・・・。
 
・不動産仲介会社に勤める
連城美和子は、喫茶店開業を目指す長谷部悠の格好の物件を紹介します。しかし、かつて悠の父親が喫茶店を営みながら僅かの間で廃業したという過去が、悠の計画に影を落としているのを感じ取ります。悠の父親が抱えている秘密とは何なのか。
 
・会社員の
御通川進は、自動車免許更新の折、御通川進に行方不明人として捜索願が出されていることを知らされます。それから何度も刑事の訪問を受けることになるのですが、一体誰がどんな理由で捜索願を出したのか。

まるで関係のない4つの物語が交互に語られていきますが、いずれも興味を惹かれるストーリィで、そこは十分読まされます。
そして、最後になってようやく、4つの物語が相互に関連性のあることが明らかにされます。
しかし、残念ながらそこには、あッという驚き、真相が明らかになるという興奮が感じられません。
そこが惜しまれるところ。


プロローグ/相沢ふたば/藤倉一博/連城美和子/御通川進(各1〜7)/エピローグ

         

2.
「箱とキツネと、パイナップル ★★    新潮ミステリー大賞優秀賞


箱とキツネと、パイナップル

2020年01月
新潮社

(1600円+税)



2020/02/19



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普通、題名から何となく感じるものはあるのですが、「箱」? 「キツネ」? 「パイナップル」?・・・なんじゃこれ?

主人公の
坂出和也は大学を卒業して、スポーツ用具メーカーに就職。ショッピングセンターの中に新規出店した店に配属となり、そこに近い中古アパート<カスミ荘>に居を定めます。
メールで小まめに連絡してくる女性大家をはじめ、住民たちは個性的な面々ばかり。
しかし、ちょっと気になるのはこのアパート、キツネに祟られているとかってあり?
大学時代の友人で臨床心理士志望、大学院に進学した
藤井夕が時々主人公を訪ねてくるのですが、その藤井、キツネ憑きを研究テーマにしたいのだとか・・・。

愛想が良くて人好きのする主人公、カスミ荘の個性的な住人たちとの交流、楽しく読み進んでしまうのですが、本作はミステリの筈。
そこで謎なのは、本作におけるミステリっていったい何?

そうか、本作のミステリ、謎解きはそこにあったのかぁ。
新潮ミステリ大賞選考会を紛糾させた話題作、とのことですが、それは判るなぁ。でも決して不快とか、騙されたという気持ちにはなりません。

主人公がさらなる一歩を踏み出すための、青春ミステリ。
藤井夕との繋がりも温かく、読了後は満足、爽快な気分です。


初見/第一週 回覧板とバスケットシューズ/第二週 コンビニとハイヒール/第三週 立て札と目玉焼き/第四週 桃と玄関チャイム/第五週 分電盤とジョギングと、パイナップル

        


   

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