向井湘吾
(しょうご)作品のページ


1989年神奈川県生、東京大学卒。「お任せ!数学屋さん」にて第2回ポプラ小説新人賞を受賞し作家デビュー。高校在学中は日本数学オリンピック予選にてAランクを受賞し本選出場、大学では体育会の剣道部に所属しレギュラーとして全日本学生剣道優勝大会に出場、四段を保有。


1.
お任せ!数学屋さん

2.
かまえ! ぼくたち剣士会
(文庫改題:ショダチ!)

3.お任せ!数学屋さん2

4.お任せ!数学屋さん3

  


     

1.
「お任せ!数学屋さん ★☆       ポプラ小説新人賞


お任せ!数学屋さん画像

2013年06月
ポプラ社刊

(1500円+税)

2015年04月
ポプラ文庫化



2014/10/27



amazon.co.jp

中学2年・天野遥のクラスにある日、変わった転校生がやってきます。その神之内宙(じんのうちそら)が行った自己紹介はというと「特技は数学。将来の夢は、数学で世界を救うこと」というもの。そして翌日、彼は自分の机の脇に「数学屋」という幟を立てて平然としている。
その宙、数学以外は全く常識を欠いている。ほっておけなくなった遥は自ら手伝いをさせてと名乗り出ます。そこから宙と遥の2人による、数学で悩みごと解決という“数学屋”の開店です。
数学系男子とソフトボール部、体育系女子コンビによる、ユニークな数学系青春小説。

新品グローブを買うお金が貯まらない、昼休みのグラウンド使用権利を巡る男子と女子の争いを解決できるのか、部活の練習メニューに従わない同学年生をどうしたら従わせられるか、そしてついには恋愛相談まで。果たしてこれらの悩みごとを数学で解決できるのやら。

毎回、数式が多数並べ立てられ、ひとつひとつの内容を理解していけば多少なりとも数学的頭脳のトレーニングになるかと思いますが、まぁその辺りは適宜要点だけを汲み取ってどんどん読み進みました。
数学を悩みごと相談の解決手段として取り込んだところが本作品のユニークなところ。勿論、数学系・体育系コンビによる掛け合いの面白さも中学生版青春ストーリィとして楽しめます。


1.数学が生活に役立つことを示せ/2.グラウンドを二等分しなさい/3.部員たちのやる気を向上させなさい/4.恋愛不等式を解きなさい/5.二人のグラフを描きなさい/6.数学で世界を救いなさい

 

2.
「かまえ! ぼくたち剣士会 ★☆
 (文庫改題:ショダチ!)


かまえ!ぼくたち剣士会画像

2014年04月
ポプラ社刊

(1400円+税)

2017年04月
ポプラ文庫化


2014/05/06


amazon.co.jp

amazon.co.jp

体格も小さな上に非力であることから挫折し、好きな剣道を諦めて入ヶ浜高校に入学した江岡慧一
そんな慧一に思いがけず
「一緒に見に行こうぜ。剣道の一番深いところを」と声を掛けてきたのが、見も知らぬ同学年生の岩瀬龍心
力が弱くて体力もない、だから自分は剣道に向いていないんだと答える慧一は、更なる龍心の言葉に返す言葉を失う。彼には左腕が無かった。
そんな龍心に無理矢理連れて行かれ、強引に入部させられたのが剣道同好会。現在の部員は4のみ。慧一が入ってやっと5名、これで試合に出られる、同好会から部に昇格できる可能性も生まれたと。
しかし、2年生の3人はいずれもあり過ぎるくらいに個性豊か。そのうえ練習の様子もそれぞれ好き勝手。
彼ら曰く、俺たちは凸凹仲間の繋がりなのだと。
そこから始まる、高校剣道部ストーリィ。

パズル大好きな慧一、果たして彼は剣道の試合にパズル得意を活かせるのか。そして仄かな恋も生まれ、典型的な高校&スポーツ&恋愛ストーリィ。
小心者の慧一、豪快な性格の龍心、その幼馴染でマネージャー女子の
光谷蓮、ペース無視の猪突猛進型=中本に、体格に恵まれているが極端な上がり症の柴崎、会話が苦手で剣術家風の湯原αという各人の個性が楽しい。
まぁ、現実そう簡単にはいかないとは思うものの、小説の中のことですから愉しむことが出来れば文句なし、という一冊。

     

3.
「お任せ!数学屋さん2 ★☆


お任せ!数学屋さん2

2014年10月
ポプラ社刊

(1500円+税)

2016年04月
ポプラ文庫化



2014/11/10



amazon.co.jp

数学に関しては天才少年だった数学屋の主役=神之内宙が米国に去ってしまい、数学屋も一冊のみで完結だろうなァと思っていたら、意外にも続編が登場。
宙によって数学の力を知った
天野遥、一人残されたものの夏休み中に数学を熱心に勉強し、数学屋再開!です。
といっても宙ほどの自身が持てる筈もなく、数学屋のキャッチフレーズは
「悩みごと、解決します」から「一緒に考えます」へと修正。
しかし、これがいみじくも第2巻の内容を物語っていて、相談者と一緒にというだけでなく、仲間と一緒に解決しますという意味も含んでいます。
その仲間とは、同じソフトボール部で仲の良い
真希、葵、そして野球部のという3人。
そして今やネット社会、第3章から国際電話、メール、スカイプを使って限定的ながら宙も再登場、数学屋5人が勢揃いです。

数学の面白さを紹介した第1巻と対照的に、皆で一緒に考え、行動するという楽しさを描いた第2巻、学園小説としての面白さはむしろ第2巻の方が優っているように思います。

第1章から第5章まで、本巻では遥たちが通う東大磯中、その伝統的な文化祭である“
鴫立祭”が重要な背景となっています。
最終章での鴫立祭の当日、果たしてどんなハプニングがあるのやら、お楽しみです。


1.文化祭の出し物を決めなさい/2.美しいアーチを設計せよ/3.女心を理解しなさい/4.不登校の生徒を救いなさい/5.夢との距離を測りなさい/解答・解説−月と宙と遥

         

4.
「お任せ!数学屋さん3 ★☆


お任せ!数学屋さん3

2015年10月
ポプラ社刊
(1500円+税)

2017年10月
ポプラ文庫化



2015/11/04



amazon.co.jp

シリーズ第3巻。今回は見送ろうかなァと思いつつ、結局はシリーズものだからと手に取りました。

中学3年、
真希たちが出場する最後のソフトボール大会、数学を以てしても試合に勝つのは中々の困難事のようです。
「数学で世界を救う」というキャッチフレーズももはやマンネリ化の極みか、と思ったところで神之内宙がいきなり登場。日本に一時帰国したという理由で遥に会いに来ます。
遥が気になったのは、宙の傍らで寄り添うようにしている同年代の少女=
佐伯明日菜の存在。その明日菜、いつもへらへらと笑っているようで、遥は神経を尖らさざるを得ません。

本書で不思議に感じたのは、
「問」と冠された章と「解」と冠された章が交互に設定されていること。
前者は現在ストーリィ、後者は明日菜による回想ストーリィ。それが何をもたらすかと言えば、終盤に至って宙が“数学屋”を開業するに至った理由、宙がただ一つ遥に吐いたという嘘の内容が明らかにされます。

一旦振り上げた、数学で世界を救う“数学屋”の看板、その決着をつける巻だったのかと思います。そう思えば前半物足りなさを覚えた本巻にも、納得ができるというものです。


問1.試合をひっくり返しなさい/問2.親友の支えになりなさい/問3.宙の嘘を見つけなさい/問4.今の価値は測れるか/問5.数学で世界を救いなさい
解1.水と油は夢を語る/解2.計算通りの、喧嘩の始末/解3."神之内君"が"宙"になった日/解4.一日だけでも

 


  

to Top Page     to 国内作家 Index