本山聖子(もとやま)作品のページ


1980年鹿児島県生、長崎県育ち。東京女子大学文理学部日本文学科卒後、児童書・雑誌の編集に従事。2007年結婚。翌年27歳の時に患った乳がんの闘病を機にフリーランスに転向。17年「ユズとレモン、だけどライム」にて第11回小説宝石新人賞を受賞。20年「おっぱいエール」にて作家デビュー。

 


                   

「おっぱいエール ★★


おっぱいエール

2020年01月
光文社

(1600円+税)



2020/02/20



amazon.co.jp

20代、30代と若くして乳がんを患った三人の女性を主人公に、その状況と思いを描く連作ストーリィ。

一人目の
橘百花・25歳は、結婚して僅か半年。30歳までに2人の子供を持ち、将来はカフェオーナーが目標だったのに・・・。
二人目の
古賀菜都・32歳は老舗の造り酒屋の嫁で、1歳になったばかりの娘の母親。しかし、夫はマザコンで・・・。
三人目の
田中柚子・29歳は、発病・手術してから3年。整ったばかりの婚約は解消され、一人で闘病した辛い過去を持つ。

上記3人の状況・闘病生活を一人一人、章ごとに描いた後で、ブログで知り合った3人が金沢〜能登を巡る温泉旅行へ一緒に出掛けるという4章構成。

癌と宣告されればそれがどんな部分のものであろうとショックを受けるのは当然だと思いますが、その中でも乳がんは、女性にとって大きな影響を及ぼすものですし、さらに若くしての発症となれば、相当なショックだろうと思います。
その辛さや絶望感は、身近な家族といえども、その家族がどれだけ本人の気持ちを理解しようとしても、同じ思いを共有することは中々に難しいことだと思います。
その点で分かり合えるのは、誰よりも同じ辛さと経験を味わってきた女性、すなわち乳がん患者仲間であるのは当然のことでしょう。

三者三様。それでも三人が集まって一緒に旅をすると、お互いに通じ合えることが大きいのでしょう。三人の姿からは、そんな解放感、楽しさが感じ取れます。
そして、それぞれに前へ進む勇気、気力、さらにやっと自分自身を肯定する気持ちになる・・・本作はそんなストーリィです。

本作を読めば、きっと元気になれます。
著者である本山さん自身も乳がんを患ったからこそ書けた、乳がんを患った女性たちへ強くメッセージ、そして心からのエールを贈るストーリィになっています。お薦め。

1.百花の妊活エール/2.菜都の子育てエール/3.柚子の恋愛エール/4.フルーツバスケットの未来エール

        


   

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