水野スミレ作品のページ


1966年神奈川県生、高校卒業後通信メーカー勤務を経て結婚。沖縄県那覇市にて専業主婦生活を送る。二児の母。「ハワイッサー」にてNext賞を受賞して作家デビュー。

 
1.
ハワイッサー

2.専業主婦になりたい

 


   

1.

●「ハワイッサー」● ★★         Next賞




2003年06月
角川書店刊
(950円+税)

 

2007/01/17

 

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主婦の主婦による主婦のため(?)の小説、と言いたくなるような作品です。
専業主婦はつまらないと愚痴ばかり聞かされてきた所為か、主婦業を、それもプロ意識をもって生き生きとこなしている本作品の主人公、コトブキはもうまぶしいくらいです。
本書はそんなコトブキの、専業主婦パワー全開の一日を描いた作品です。

でもここまで目一杯奮闘していたらどこかで疲れが一気に出るんじゃないかと心配してしまうのですが、そこはコトブキの性格によるのでしょうか。
ただ、そこまで高い意識をもって体当たり的に主婦業をこなしている以上、どこかでストレス発散しないともたない筈。
コトブキにとってのそれは、夫以外の定期的なセックス相手(要するに浮気相手)2人との奔放なセックスであり、また近所の整形外科医院で若い男性から受けるマッサージだったりするのですから、その抜かりなさというか徹底振りにはただただ圧倒されてしまいます。
亭主族の一人としてはトンデモナイというべき行動ですが、コトブキの全力投球ぶりを見せつけられると納得する気分になってしまうのですから、可笑しい。

何も亭主にそこまで気を遣い、尽くすこともないのにと思うのですが、どうもそれはコトブキ自身の満足のためらしい。
オシカケ女房である以上自分でこれが幸せだと思い込むしかないと決め込んでいるようです。
2人の子供にも全力投球するものの、一方でうまく育たなくても「苦労するのはこの子たちであって私じゃないしね」と呟くのですから、痛快。

有川浩「図書館戦争も型破りな作品でしたけれど、こちらもまた違ったタイプの、主婦が生み出した型破りな作品です。
なお、題名の「ハワイッサー」は、沖縄独特の表現で“極楽”という意味だとのこと。

    

2.

●「専業主婦になりたい」● 




2006年12月
中央公論新社

(1500円+税)

 

2007/01/24

 

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前作のハワイッサーと同じように専業主婦の話かとのんびり読み始めたところ、最初からカップル喫茶(スワップサービス有り)のオーナーに惚れ込んでセックスまみれになった離婚女性が主人公であるというストーリィですから、面食らわずにはいられません。
・・・と思ったら、主人公のスミレは初めて書いた小説が新人賞を受賞し、現在は2作目の小説を書くのに呻吟中という展開に続くのですから、えっ今までのは何だったの?となります。

ストーリィは、専業主婦として夫と子供に尽くす穏やかな生活をしたかったのに現実は離婚し、惚れ込んだ相手も相手で現実はままならぬという、子供付きバツイチの女性を主人公にしたもの。
専業主婦をしていた間は、別れた夫から余計な金喰い虫のように思われ、離婚して実家に戻れば母親に生活を依存する他なく、主人公としてはパラサイト(寄生者)として遠慮しつつ暮らさざるを得ない。
専業主婦になって穏やかに暮らしたいという願いをかなえることが、何でこんなに難しいことなのか。主人公の思いは綿々と語られます。でも、多くの専業主婦たちもそれなりに多くの不満を抱えていることでしょうし、要は気持ちの持ち方次第というべきなのか。
驚かされること色々ある作品ですが、家族がお互いの絆さえ大切に保っていれば、何があってもまず幸せじゃないか、そんな声が本作品から聞こえてくる気がします。

 


   

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