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2.優駿 3.異国の窓から 4.泥の川・蛍川 5.愉楽の園 7.草原の椅子 8.骸骨ビルの庭 |
●「ドナウの旅人」● ★★★ |
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1988年06月
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麻紗子の母・絹子が突然家出した、それも年下と男と共にドイツへ向かったらしいという知らせから、麻紗子は再びドイツの地に向かう。
「ドナウの旅人」という題名自体、ロマンティックでとても惹かれるものがありました。ドイツ、オーストリア・ウィーン、ハンガリー・ブタペスト、ユーゴスラビア・ベオグラード、等々と、遥かな道のりの旅であることにも惹かれます。更に、シギィの友人ペーター・マイヤー、ウィーンの日本人留学生仲間たち、様々な人々との出会いのストーリィも魅力です。 ※本書の後は是非「異国の窓から」へ |
●「優 駿」● ★★★ 吉川英治文学賞受賞 |
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1986年10月 1988年06月
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“オラシオン”(スペイン語で祈り)という名前の競走馬サラブレッドと、その周囲の人間の生き方を描いた作品。 ※緒形直人、斎藤由貴主演により映画化されています。 |
●「異国の窓から」● ★★★ |
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1991年08月 1996年02月 2003年01月
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「ドナウの旅人」を朝日新聞に連載するに先だって行われた、ヨーロッパ諸国への取材旅行についての紀行文。 |
●「泥の河・蛍川」● ★★★ |
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1980年02月 1986年01月 1994年12月
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川3部作を収録。「泥の河」は太宰治賞、「蛍川」は芥川賞を受賞、他にもう一作「道頓堀川」 。 とくに「泥の河」が強く印象に残りました。 |
●「愉楽の園」● ★☆ |
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1989年03月 1992年03月
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タイ=すなわち媚薬的な雰囲気をもつ地、そんな舞台設定に立ったストーリィです。 |
●「ここに地終わり海始まる」● ★☆ |
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1991年10月 1994年10月 2008年05月
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本書の題名は、ポルトガルのロカ岬にある碑に刻まれた文言ということです。この文言から小説という発想が生まれたと、宮本さん自身も言っています。その通り、この題名からだけで充分にロマンを感じるようです。 |
●「草原の椅子」● ★☆ |
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2001年04月 2008年01月
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中年に至り、ふと思えば人生の転換期に立っていた、という男性2人を中心に展開するストーリィ。 上下2冊とも、帯の宣伝文句は相当に大袈裟、と思わざるを得ません。 気持ち良く読めるけれども、かえって読後の印象は早く薄れそう、そんな感じがしてします。 |
●「骸骨ビルの庭」● ★☆ 司馬遼太郎賞 |
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2011年12月
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戦後、何人もの戦災孤児の面倒をみて育て上げることに一生を費やした2人の青年がいた。 相変わらず宮本輝さんはストーリィ運びが実に上手い。滑らかにストーリィが展開していき、スムーズに読み進んでいくことができます。 あぁ、それなのに・・・。 かつての孤児たちの人物像は、個性十分。そして彼らが語る彼ら自身と阿部轍正らとのドラマには、深く惹き付けられて止まないのですが、クライマックスないままに終わったという思いが消えず・・・。 |
「田園発 港行き自転車」 ★★ |
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2018年01月
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「田園」「自転車」と、題名からして心惹かれる長編小説。 まず冒頭、脇田千夏という20歳の女性が、1年半勤めた東京の会社を退職し郷里に帰ろうとするところから本ストーリィは始まります。 次いで、東京に住む賀川真帆という35歳の絵本作家が登場。15年前、彼女の父親でカガワサイクルの社長だった賀川直樹が、宮崎へゴルフに行っていた筈なのに何故か富山県の滑川駅に居て、そこで心筋梗塞の発作で急死したという事情が語られます。仕事で京都にある絵本出版社に出掛けた真帆は、同い年の担当編集者にけしかけられ、2人で富山から滑川へと自転車旅行をすることになります。 さらに京都の花街、母親が始めた「小松」というお茶屋バーを引き継いで経営している甲本雪子53歳が登場、かつての馴染客が十数年ぶりに店を訪れたところから、彼女を起点とするドラマも幕を開けます。 次々と登場する人物たちが互いに何らかの関係を持っていることが描かれ、その関係は順々と掘り下げられていきます。 さらに滑川市に住み富山市内で美容院を営む夏目海歩子(みほこ)という47歳の美容師とその息子で中学生の佑樹が登場、やがてストーリィはその母子を中心軸として展開していきます。 登場人物たちが相互に関わりを持っていることが明らかになっていく面白さに、賀川夏樹の死にまつわる謎解きというワクワクする面白さが加わります。 この辺りいつも感じることですが、宮本輝作品は実に読み易く、かつストーリィは面白く、読書という行為自体がとても楽しく感じられます。 本作品の魅力は、人の繋がりに合わせ、輪のように心の繋がりも広がっていく処にあります。孤立的方向が指摘される現代日本社会において、それは何と快いことか。 なお、夏目佑樹という少年、少々出来過ぎといった観あり。 読み易いことは確かでストーリィも楽しく読めるのですが、ただ読み終わった時に何が残っているかというと些か疑問。 題名にある「田園」風景の気持ち良さは読了後の余韻の中、確かにあるのですが、それ以上のものが余りなく、それで良いのやらと正直なところ思ってしまいます。 |