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「イノセント・ツーリング Inoocent Touring」 ★☆ | |
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南紀(新宮〜白浜〜潮岬〜熊野本宮)をめぐるツーリング・ロードノベル。 ただし、共にツーリングする3人の顔ぶれがかなり奇妙。 主人公である40代後半予備校講師=真瀬朋美に、その大学時代のサイクリング部仲間である沢木一誠とその息子で大学受験生である龍馬という父子なのですから。 さらに龍馬は、朋美が務める予備校での担当生徒という関係。 実は主人公と沢木父子を結ぶ人物がいて、それは17年前に交通事故で死去した、朋美のサイクリング部における親友であり、かつ一誠の妻・龍馬の母である瑞穂。 龍馬が突然3人でのツーリングを言い出してきたのには理由があり、かつて朋美と瑞穂が2人だけで行った<南紀ラン>で最後に泊ったライダーハウス「ユーカリ」に書き残してきた瑞穂の手紙を確かめたい、というもの。 「ユーカリ」が廃業することになったとの連絡が届き、最後の機会として、瑞穂が遺したツーリングノートに添った旅をしたいというもの。 亡き瑞穂という存在があってのストーリィですから、ツーリングの気持ち良さと労苦が描かれるのと並行して、朋美の瑞穂との思い出、龍馬が秘めていた亡き母への思いが語られていきます。 ただし、その辺りはあるべくしてある、といった内容。 一方、こうした旅の話を読むと、旅に出たくなりますねぇ。 「旅行」と「旅」は私にとって違うもので、前者は観光、後者は見知らぬ土地と触れ合うもの。私の場合はいつも歩くこと、でした。春は、出発だけでなく、旅に出るにも相応しい季節です。 |