三並 夏作品のページ


1990年静岡県生、2005年「平成マシンガンズ」にて第42回文藝賞を史上最年少の15歳(中学3年)で受賞。

 


   

●「平成マシンガンズ」● ★★     文藝賞




2005年11月
河出書房新社

(1000円+税)

 

2006/01/20

 

amazon.co.jp

史上最年少15歳での受賞作、という点に惹かれて読んでみたのですが、予想外の面白さ。
ストーリィが面白いということよりも、畳みかける様な文章、それに圧倒されるうちに主人公にすっかり同化させられてしまっている、ヤラレタという読後感が爽快。素直に、これはお見事!と言いたい。

主人公は中学1年生の朋美。母親は父親に耐えかねて別居。その父親はキャバ嬢みたいな格好の愛人を家に連れ込んでいる。しかもその若い女は、朋美を嘲笑うかの如く傲慢に振る舞い、朋美は空腹を抱えたまま我慢するほかない。唯一学校が救いの場と思っていたら、そこでも突然シカトされる始末。
女の子がこんな状態に置かれたらきっとこうなるだろうという、朋美の心情描写が鮮やか。そして冒頭か弱そうだった朋美が、教師たち、父親、母親を見放して逞しくなるという展開は小気味良い。
そこで重要なポイントになっているのは、朋美の夢に時々出現する、マシンガンをもった死神の存在。朋美は死神からマシンガンを与えられ、知っている人間を次々と撃ち倒す。他人に依存することを止める、朋美の開き直りの象徴と思います。

ストーリィをひととおり紹介してしまった観がありますが、本作品の魅力は小気味良さ。文章自体、まるでマシンガンの弾を浴びせられるようです。この面白さは読んでみないと味わえません。お薦め。

 


   

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