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「いかれころ」 ★★☆ 新潮新人賞・三島由紀夫賞 | |
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1980年代前半の南河内が舞台。 杉崎家という地元旧家、その狭い身内社会にまるで閉じ籠っているかのように生きる、杉崎家の老若男女の姿をリアルに描いた作品。 ストーリィは、4歳の少女=奈々子の視点から描かれます。 まだまだ意気盛んな曾祖母(シズヲ)、祖父(末松)、祖母(美鶴)、長女として育てられ気儘で我儘いっぱいの母親(久美子)、それに比較して軽んじられている叔母(志保子)、叔父(幸明)、そして婿養子だからとひねた観のある父親(隆志)等々。 幼女であるが故に奈々子の見る目は容赦がありません。 だからこそ、彼らの姿が生々しく描き出されているという印象。 杉崎本家、分家さえしっかり守っていれば、すべてはそれで足りる、といった風。 そんな杉崎家で主流にいると思っている人たちの姿は堅苦しく偏屈と感じられますし、それに対し傍流の人々(志保子、幸明、隆志)らのせめてもの抵抗は共感も覚えますが、だからといって彼らは杉崎家を飛び出そうとまでは思っていない。 1980年代でまだこんな固陋な考え方をする人々がいたのか、ということに呆れる思いもしますが、そんなものなのでしょうか。 作者の力強い筆運びを感じる作品。 新潮新人賞、三島由紀夫賞のダブル受賞も納得です。 |