麻耶雄嵩
(まや・ゆたか)作品のページ


1969年三重県上野市生、京都大学工学部卒。在学中は推理小説研究会に所属。91年に島田荘司、綾辻行人、法月倫太郎3氏の推薦を受けて「翼ある闇−メルカトル鮎最後の事件−」にて作家デビュー。2011年「隻眼の少女」にて第64回日本推理作家協会賞ならびに第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞。

  


     

「あぶない叔父さん ★☆


あぶない叔父さん

2015年04月
新潮社刊

(1600円+税)

2018年03月
新潮文庫化



2015/06/05



amazon.co.jp

叔父さんの存在を鍵としたミステリらしからぬミステリであり、「探偵のいないミステリ」という点に興味を引かれて手を出したのですが、結論から先に言ってしまうと、私の好みには少々合わず。
霧の多い地方の村が舞台。それなのに次々と怪死事件が起きるのです。

主人公は地元の高校生、勇斗。事件が起きるたび大騒ぎしてそのニュースを持ち込んでくるのが、やたら騒がしい同級生の陽介。その2人に、現在のところ勇斗の彼女という位置付けにある幼馴染の同級生である真紀が加わり、あれこれと事件の真相を推理します。
ところが真相は高校生の推理などとはまるで異なるところにあり、事件の裏事情を勇斗が彼の
叔父さんから聞き出すことによって真相が明らかになる、というのが本連作短篇集における定例パターン。
勇斗はお寺の次男で、その叔父さんというのは世間をぶらぶらして故郷に戻り、今は「なんでも屋」をやっているという、少々怪しさを感じる人物。したがって家族に歓迎されていない持て余し者なのですが、同じ次男坊という立場にある所為か、勇斗は慕っているという設定。

この叔父さんが曲者で、題名の「あぶない」というより、むしろ不気味、怖いとさえ私には思えてしまうのです。叔父さんの言うことを、主人公のようにそのまま信じてしまって良いのだろうか。もしかして・・・・。
勇斗にもそんな感じがなくはないのですが、家族の平穏を守るためあえて考えないようにしているのかもしれません。
したがって、不気味、ミステリアスという雰囲気が好きな方はいざ知らず、明るく爽快な結末が好きという私のような人間には、些かしこりが残る作品です。

失くした御守り/転校生と放火魔/最後の海/旧友/あかずの扉/藁をも掴む

 


  

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