真山 仁
(まやまじん)作品のページ


1962年大阪府生、同志社大学法学部政治学科卒。新聞記者、フリーライターを経て、2004年「ハゲタカ」にて作家デビュー。

  


 

●「プライド」● ★☆




2010年03月
新潮社刊

(1400円+税)

2012年09月
新潮文庫化

 

2010/05/22

 

amazon.co.jp

民主党の事業仕分けパフォーマンス、期限切れの食材を使って平然とコスト圧縮する老舗菓子メーカー等々、現代日本で話題となった実際の事例を題材に描いた、社会派小説短篇集。

ニュースでも注目を集める事柄だけに、それなりに面白いのですが、プライドという要素が鍵になっているところが本書のミソ。
即ち、生半可な知識で事業を仕分けしようとする側、記者会見で謝るのがイヤだという創業者一族出身の社長にもプライドがあれば、自分が信念をもって手掛ける事業を守ろうとする側にもプライドがあり、食品メーカーとしての良心を守ろうとする社員の側にもプライドがある、といった次第。
プライド、誤ったヘンなプライドに縛られると自分を含め周囲を損なうことに繋がる。でも、それを防ぐのもまたプライドであるという面もあり、プライドの功罪様々、ということでしょうか。

プライド=自尊心、つまりその基軸は自分自身にある訳で、重要なのは自尊心ではなく、その人物の識見なのだろうと思います。
ただ、私の限られた会社勤め経験からだけ言っても、最近は本当にプライドがないのか?と言いたくなる場面が増えました。
実力主義による評価、若手登用と繰り返し叫ばれる中で実際はというと、上から言われたことを良いかどうか考えもせず唯々諾々と実行に走り、上の方針なんですから仕方ないんです、と言い、他の意見を検討もせずに小手先の方法に終始する、等々。
耳に痛い意見程聞いて検討する必要がある、というのが私の考えですが、耳に痛い意見は聞かないという傾向が増えているのか。
中身が空っぽであっても、プライドはプライド。

本短篇集で描かれているストーリィ、それ程衝撃的な内容はありませんが、総じて感じるのは、プライドはないのか!という作者からの強いメッセージ。
事実、「あとがき」で作者はそう述べています。

なお、本書中痛快なのは、生半可な知識を振りかざして事業仕分けをしようとする議員たちを向こうに回し、自ら進める政策の重要性を堂々と主張する官僚=米野太郎57歳の姿を描いた「一俵の重み」。このストーリィを痛快と感じたことに、私自身、事業仕分けパフォーマンスを必ずしも諒としていなかったことに気付きました。
表題作「プライド」は、期限切れ食材を確信犯的に使用していた老舗メーカーを描くストーリィ。

一俵の重み/医は・・・・・/絹の道/プライド/暴言大臣/ミツバチが消えた夏

 


  

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