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「わたしが行ったさびしい町」 ★★ |
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かつて訪れたさびしい町の記憶を綴ったエッセイ集。 雑誌「新潮」に2019年1月号から20年8月号まで連載された連作エッセイの単行本化。 「さびしい町」というと否定的な印象を受けてしまいますが、本書においては、そんなことはありません。 著者である松浦さん曰く、「わたしがさびしい町が好きだからである」ということですから。 もっとも、本書の中には松浦さんが大好きだという町のことも語られており、「さびしい町」だけではないようです。 単なる旅行エッセイではありません。 いろいろな町を訪ねた時の経緯、その時の状況も合わせて語られており、それは人生の回想に繋がっています。 そこが本作の読み処でしょう。 さびしいと感じたからこそ記憶に強く残り、何故ここに来たのだろうと考え、自分の来し方を振り返ることにもなる、からでしょうか。 それ故に、一気に読み進める本ではないと思います。一日に一篇か二篇ずつ読んでいく、その方が相応しい一冊であると思うのですが、そこはいつも後悔先に立たずと思うパターン。 これから読む方は、是非私のような失敗はなさいませんように。 ※松浦さんとは私は同学年でしょうか。私が20代の頃、海外旅行などは夢みたいなものでしたが、普通行かないようなところまで足を伸ばしているところに驚きます。 留学とか学会とか様々な機会があったからでしょうけれど、それにしてもなぁと、つい思わざるを得ず。 ナイアガラ・フォールズ/ペスカーラ/イポー/名瀬/ヴィル=ダヴレー/ニャウンシュエ/タクナ/上野/シャトー=シノン/長春/上田/台南/コネマラ/パリ十五区/江華島/トラステヴェレ/アガディール/ドーチェスター/中軽井沢/夢のなかで行った町 |