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1.空打ちブルース 2.行ってきまぁす! |
1. | |
●「空打ちブルース」● ★☆ 講談社児童文学新人賞 |
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自称「四流高校生」と自嘲する、高校一年、16歳の主人公ケージュンを描いた高校生小説。 学校で勉強する気もない、学校へ行くよりバイトで稼ぐ方がいい、バイト代振込のための預金口座を銀行に開きにいけば、余りのトンチンカンに受付のおばさん行員を呆れさせるばかり。 こんな典型的なオチコボレ、良いところまるでナシ、といった高校生を主人公にした小説って、珍しいのではないか。 ついつい、何でこんな高校生が生まれてしまったのだと思う一方で、何でこうした高校生を日本社会は生み出してしまったのか、とも思います。 もっともケージュンの場合、そもそも家庭環境にも問題大ありと思うのですが。 こうした高校生たち、何をしたいのか、何をどうしようと思っているのか、本作品はそれらのことを考えるのに良い機会を与えてくれていると思います。 単にダメだと済ませてしまっては、何にもならないのですから。 現にケージュン、いいところもあると示してくれましたし。 ※題名の「空(から)打ち」とは、レジでのイカサマのこと。 |
2. | |
「行ってきまぁす!」 ★★ |
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2013/08/25
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小学校4年の新学期を迎えた長谷部歩美はワクワクしている。 というのは4年生になると、歩美の住んでいる北都市(札幌市がモデルと思われる)の街中心部を子供たちだけで巡るスタンプラリー=“ノルミル”に参加することができるから。 という訳で歩美は早速、幼馴染の陽太にノルミルをしようと誘います。 ただし、ノルミルにはメンバー3人以上が原則ということでもう一人誰かを誘う必要があります。 誘いにのってきたのは、1回目は将棋好きの佐伯田くん、2回目はプリクラ狙いの翔子ちゃん。 さて、歩美たちのノルミル、自分たちだけで無事に行動できるのか。 歩美のワクワクする気持ちが伝わってきて、読み手もノルミル開始前から楽しくなってきてしまいます。 だからといってすんなり行くとは限りません。始まりの切符購入から戸惑い、別れ別れになってしまったり、楽しいこともありますが怖いことにもまた遭遇するといった具合。 そんな失敗も含めてノルミルは良い経験にもなり思い出にもなるとは大人だから判ることで、当人たちは必死です。 でもそんな心配は本人たちだけではなく、実は送りだす親側にも共通することで同じように勇気が必要だとは、苦労してこそ歩美も学んだこと。 大人の目からすれば何だそんなこと、という内容ですから、本書を楽しむには一旦子供の視点に立つ必要があります。 このスタンプラリー、子供たちにとっては良い冒険ですよね。 なお、ノルミルで廻った先々、スタンプを押せば終わりだけでなく、展示そのものを楽しんでくれて嬉しいという職員の言葉も見逃せません。 |