冒頭の「電気ちゃん」は、ある理由で家を飛び出した女子高生の鳥子16歳が、“電気”と名乗る中年男と出会い、そのアパートの部屋に居候させてもらう話。
「歯がた」は、7歳年上の女性=紫と同棲中のOL=寿々26歳が乳がんを宣告される話。
「チョコレート」は、料理を作って人に食べさせることが好きなバツイチ女性=きみ夜38歳の話。
「種」は、前述の高級クラブ・ホステスである紫の話。
最後の「ざらめ」は、18歳になった鳥子と“ざらめ”という少年との出会いを描いた篇。
どれも索漠とした現代の街の片隅で寂しげに暮している女性たちを連作形式で描いたストーリィなのですが、「チョコレート」に至って、彼らに或る共通点のあることが判ってきます。
4人共それぞれ孤立して生きているような女性たちですが、あることを境に一転、彼女たちの間に繋がりが生じる処に何ともいえない味わいを感じます。
およそ考えてもいなかった展開だけに、救われる思いもします。
脆さと気遣い、そこから生まれる人と人の繋がり。
ごく小さな繋がりに過ぎないのかもしれませんが、無から有が生まれたところに、人と人の関係って捨てたものじゃない、と思わされます。
なお、直接の登場は冒頭の僅かな部分に過ぎないのに、彼女たちの間に繋がりが生まれた背景に電気ちゃんが存在があるように感じられるのですから、不思議です。
切なくも楽しくも、そして救いも感じられる、不思議な魅力ある一冊。お薦めです。
電気ちゃん/歯がた/チョコレート/種/ざらめ
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