黒田研二作品のページ


1969年三重県生、信州大学経済学部卒。2000年「ウェディング・ドレス」にて第16回メフィスト賞を受賞し作家デビュー。。

 
1.カンニング少女

2.CUTE&NEET

  


     

1.

●「カンニング少女」● ★☆


カンニング少女画像

2006年04月
文芸春秋刊

(1429円+税)

2009年03月
文春文庫化

  

2011/08/14

  

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5ヵ月前、交通事故で死んだ姉の芙美子。しかしその姉は、尊敬する大学教授に関わる秘密を知って、脅されていたらしい。
姉の死の真相は? それを探るためには、姉の通っていた最難関私大=
馳田学院に入学するしかない。
都立K高校3年の妹=
天童玲美はそう決意したものの、あいにく玲美の今の成績では、馳田学院の入試突破はとても無理としか思えない。
そんな玲美を入試に合格させようと、3人の同級生らが立ち上がります。
学年一の優等生である
並木愛香、機械いじりに天才的な能力を発揮する平賀隼人、インターハイ100m3位の椿井杜夫
そしてその方法とは・・・必勝のカンニング。

一方、馳田学院で咲田学教授の助手を務める鈴村恭子。講義もろくに受けずに単位を簡単に取得できると思うなんて許せないと、教授に図って単位取得を厳しくしたばかり。当然、カンニングも絶対許さないと、受験日当日、4人の前に最後の障壁として立ちふさがります。

友情に基づく青春コン・ゲーム小説。
もちろんカンニングという不正が許されないのは当然のこと。でも、きちんと講義も受けずに単位取得するのと、目標を掲げ熱心に勉強するために敢えて不正を犯してまで入学キップを手に入れようとするのと、どちらが正しいと言うべきなのか。

まぁそんな堅苦しい論議は脇に置いておけば、ゲーム感覚の楽しい高校生ストーリィ。
最後にきちんと真相、成果が示されるところにも、好感が持てます。

         

2.

●「CUTE&NEET キュート&ニート」● ★☆


キュート&ニート画像

2012年01月
文芸春秋刊

(1400円+税)

  

2012/02/16

  

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高校2年の時から12年も自宅にひきこもり続けているオタク青年=白畠鋭一、28歳。
バツイチの姉がNYへ3週間出張することになった、ついてはその間、娘
リサの面倒を見てやってほしいと頼まれるのですが、肝腎の鋭一、家を出て東京から名古屋まで行くだけでもよれよれという情けない状況。
姪のリサは5歳の幼稚園児。ところが鋭一より余っ程しっかりしていて、鋭一の食事もリサに面倒をみてもらう、という役割が全く逆という具合。題名の「
CUTE」とはリサ、「NEET」とは鋭一のこと。
たった5歳のリサちんですが、明るく元気で、幼稚園でも人気者。おまけに観察眼、推理力も備えていて、只者ではない。
幼稚園周辺で起きる様々な事件、幼稚園児の失踪、居場所不明、鋭一が小さな男の子から手渡された「たすけて」というメモの謎等々をリサがあっさりと解き明かしてしまうのですから、凄い! 最年少探偵ではあるまいか。

そうした探偵劇、実は本作品におけるスパイスのようなもので、真のストーリィは、リサや幼稚園の子供たち等々にもまれて各章ごとに鋭一が一歩ずつ前進する、というところにあります。
鋭一のことだけでなく、併せて子供たちの可能性もまた感じ取ることができる点が本書の楽しさ。
5歳の幼稚園児=リサちんのキャラクターも抜群なのですが、世の中、どこにでもチャンスはある、ひょんなところに自分が変われる転機は転がっている、という希望を楽しみながら見いだせる点が本作品のミソでしょう。

    


  

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