小前 亮
(こまえ・りょう)作品のページ


1976年島根県生、東京大学大学院修了。在学中より歴史コラムの執筆を始める。2005年「李世民」にて作家デビュー。

  


     

「月に捧ぐは清き酒−鴻池流事始− ★☆


月に捧ぐは清き酒画像

2014年03月
文芸春秋刊

(1750円+税)

2016年11月
文春文庫化

 


2014/04/20

 


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尼子家に仕え戦国史上著名な人物となった山中鹿介、その子である新六(後に新右衛門)が武士の道を捨て、人々を幸せにする商売を目標に掲げて清酒造りに尽力し、後に鴻池財閥の始祖となるに至る足跡を地道に描いた時代版ビジネス起業小説。

鹿介が我が子を託した叔父=信直・やえ夫婦の元で成長した新六は、領主である荒木村重の反乱で織田勢との籠城戦を経験したその後、武士ではなく商売の道を志します。
予想外な商い順調、思わぬ裏切りを経て、新六改め新右衛門は知り合った酒造り職人=
吾助を雇い入れ、地元の鴻池村で酒造りを始めます。
それなりに商いを軌道に乗せたものの、儲かるということまで中々到達していなかった新六に道を開いたのは、徳川家の重臣=
大久保忠隣から諸白の酒を江戸まで運んで売って欲しいとの申し出を引き受けたことから。
ここが勝負処と見極めた新右衛門は、江戸迄の輸送手段に注意を払い、商売の拡大を目指します。その一方で政治情勢はと言うと、豊臣・徳川の対立を含んで不穏さ増すばかり。
混迷する時代の中で、どういう志の元、新規事業を繰り広げ成功に導いていったのか、というストーリィ。

どちらかというと地味な作品、ドラマチックな部分が多いとは言えません。でも堅実なビジネスとそれは共通すること、と言われればその通りかもしれません。
それでもビジネスを大きくしていくためには何が必要なのか、という点はきちんと描いているように思います。
それにしても、鴻池財閥と山中鹿介を結び付けて考えたことはなかったなぁ。


1.戦場を照らす月/2.菊花の炭/3.酒造りの秋/4.江戸送り/5.武士の血、商いの道

 


  

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