風野真知雄
(かぜの・まちお)作品のページ


1951年福島県生、立教大学法学部卒。雑誌記者を経て作家。93年「風牛と妖怪」にて第17回歴史文学賞を受賞し作家デビュー。2002年、第1回北東文芸賞、15年「耳袋秘帖」シリーズにて第4回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞を受賞。

  


     

「卜伝飄々 ★★


卜伝飄々

2015年08月
文芸春秋刊

(1550円+税)

 


2015/09/10

 


amazon.co.jp

塚原卜伝といえば剣聖として有名ではあるものの、上泉伊勢守信綱や宮本武蔵よりも前の時代であり、彼らに比べると小説への登場頻度が低くこれまで読んだ覚えが余りなかった、ということもあって手に取った一冊。
老剣客、飄々というと
池波正太郎「剣客商売秋山小兵衛を連想しますが、あちらは若いおはるを女房に据えるぐらいですからまだまだ俗っ気充分。それに比較して本書の塚原卜伝、いかにも枯れた感じでまさに飄々という雰囲気。
老境に至った卜伝のその飄々ぶりが何とも味わい良く、心の底から楽しめます。

各章、卜伝の剣聖ぶりを伝えるような逸話を織り込みながら、60代となりもはや老剣客、でもまだまだ剣の達人、という卜伝の人物、そして新当流の極意をさりげなく語り伝える連作ストーリィとなっています。
私自身も本書の卜伝に近い年齢となった所為か、卜伝の心境に共感を覚えると共に、脂ぎった剣客ストーリィより本作品の方がよほど上等である、と感じます。
ただそれは、作者の風野さんにうまく乗せられた、ということでしょうか。(笑)

足利将軍義輝、細川藤孝、松浦弾正、宮本武蔵と、登場人物もそれなりに賑やかです。
いやぁ塚原卜伝、60代に至りと言えども、中々に若い若い。見習わなくては。


1.南蛮狐/2.鮟鱇の疣/3.蠅の殿/4.半々猫/5.首無し地蔵/6.月を斬る/7.鍋の蓋/塚原家後談

 


  

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