川瀬七緒
作品のページ No.2



11.スワロウテイルの消失点-法医昆虫学捜査官No.7-

12.賞金稼ぎスリーサム!
-賞金稼ぎスリーサム!No.1-

13.二重拘束のアリア-賞金稼ぎスリーサム!No.2-

14.ヴィンテージガール-仕立屋探偵 桐ヶ谷京介-

15.うらんぼんの夜

【作家歴】、よろずのことに気をつけよ、147ヘルツの警鐘、シンクロニシティ、桃ノ木坂互助会、水底の棘、メビウスの守護者、潮騒のアニマ、フォークロアの鍵、テーラー伊三郎、紅のアンデッド

 → 川瀬七緒作品のページ No.1

 


              

11.
「スワロウテイルの消失点-法医昆虫学捜査官- ★★


スワロウテイルの消失点

2019年07月
講談社

(1500円+税)

2021年07月
講談社文庫



2019/08/19



amazon.co.jp

法医昆虫学捜査官シリーズ第7弾。
すっかり恒例化した本シリーズ、初めての頃のような興奮する驚きはもうありませんが、やはり楽しい。

今回は、独居老人が殺害され、自宅で発見されるという事件。
ところがその遺体解剖中、解剖医をはじめ、解剖に立ち会っていた
赤堀、岩楯刑事ら関係者が猛烈な痛み、痒みに襲われ隔離されるという事態が発生します。
その犯人は、<小黒蚊>という台湾や中国に生息する強烈な毒をもったハエ目ヌカカ科の吸血毒虫。
日本に生息していない筈の小黒蚊が何故?というところから、赤堀による捜査が展開されていきます。

本作の面白さは、捜査の顔ぶれにあると言って良いでしょう。
警視庁捜査一課の岩楯警部補とコンビを組むのは、地元高井戸署の深水彰巡査部長。
この深水刑事が結構クセ者である上に、あれこれよくしゃべる。そのやりとりも面白い。
一方、赤堀の側には、現場体験をしたいと言って
<捜査分析支援センター>のメンバーであるベテラン鑑識官=波多野が助手につく他、途中から三浦夏樹というヒキコモリ中学生が加わります。
この夏樹と赤堀のやりとりも、結構読み甲斐があります。


今回、独居老人の殺人、その犯人の捜索という軸がかっちりしているので、捜査ストーリィをじっくり楽しめた、という処。
だからこそなのか、犯人逮捕に至る終盤ではとんでもない危難が待ち受けていました。

まぁ、何といっても深水刑事、夏樹少年の存在が本作ストーリィを読み応えのあるものにしてくれています。
毎回読むのが楽しみな本シリーズですが、次作も楽しみです。


1.感染と隔離/2.法医昆虫学者の助手/3.SOSのサイン/4.二つの道が交わる場所/5.覚悟と減らず口

            

12.
「賞金稼ぎスリーサム! Bounty hunting Threesome! ★★


賞金稼ぎスリーサム!

2019年10月
小学館

(1600円+税)



2019/11/22



amazon.co.jp

「賞金稼ぎ」? 西部劇ならいざ知らず、現代日本でこれって?と言いたくなる題名ですが、本当にそうしたストーリィ。

個性的なキャラクターの持ち主3人が一つチームを組んで、というところに極めつけのユニークさあり、しかも賞金稼ぎという珍しい設定、というところが面白味のミステリ。

一人は、くも膜下出血により意識障害の状態にある母親を介護するため職を辞した元有能な刑事だった
薮下浩平・43歳
もう一人は、その薮下を多額の報酬で釣り出した、桐生製糖株式会社の御曹司で究極の“警察マニア”である
桐生淳太郎・33歳。薮下とは、公務執行妨害で逮捕されたことがあるという縁。
そして2人が偶然出会ったのが、賞金目当てで事件を調べていた
上園一花・24歳。この一花のキャラクターが突出しています。業界では崇拝される程の凄腕ハンター(狩猟者)である一方、垢ぬけず不器用このうえない田舎出の女子、という役柄。

事件は墨田区の古い住宅街で起きた、家屋12軒、住民6人が犠牲となった火災。警察は、火元となった元ペットショップの経営者による保険金詐欺と決めつけますが、本当にそうなのか。
薮下・淳太郎の調査活動に一花が加わった辺りから、本格的な捜査活動が始まります。

薮下は元刑事ですから、その行動はオーソドックス。しかし、そこに桐生の情報力、一花の獲物を追う嗅覚が絡みむことにより、思いもよらぬ犯人像が浮かび上がってくるという展開。
その犯人像がまた凄い。まさか、こんな強敵、凶悪が犯罪者が浮かび上がってくるとは。

上園一花、
法医昆虫学捜査官シリーズに照らせば、赤堀涼子のような位置づけでしょう。
ともあれ、新たなシリーズの始まりのようです。今後が楽しみです。


水と油、金とマニア/ハンターと白いワンピース/ガンロッカーと罠/二人の起点/チーム・トラッカー

               

13.
「二重拘束のアリア-賞金稼ぎスリーサム!- ★★☆


二重拘束のアリア

2020年08月
小学館

(1700円+税)



2020/08/17



amazon.co.jp

賞金稼ぎスリーサム!シリーズ第2弾。
賞金稼ぎなんて現代日本においてシリーズになりうるものか、と思っていたのですが、この第2弾、文句なしに面白い!
疑問を呈したこと、恥じるばかりです。

前作でチームを組んだ元刑事の
薮下浩平、大会社の御曹司で警察マニアの桐生淳太郎、天性の凄腕ハンターである上園一花は刑事事件専門調査会社「チーム・トラッカー」を立ち上げます。
そこに依頼があったのは、3年半前に起きた、若い夫婦がお互いに殺し合って共に死亡したという事件。
警察の捜査は<殺し合い>ということで既に決着済み。
亡夫の家族は警察官僚一族ということで何らかの情報は得ていたと思われますが、収まらないのはつんぼさじきに置かれた亡妻側の
倉澤夫妻
事件の真相を調べてほしいと、3人に調査を依頼してきます。

愛し合って結婚した筈の2人が何故、片やバット、片やナイフを振りかざして殺し合うような惨劇を起こすに至ったのか。
3人が幾ら調べても事実は変わらず、真相は皆目わからず。
でも3人が活動を続ける中で、次第に思いもかけない出来事が見つかり・・・。

主役の3人とも個性的で、お互いの持ち味を発揮して事件を追い詰めていくところが面白いのですが、何と言っても抜群の存在感を発揮しているのが一花であることは言うまでもありません。
その対極に位置するのが薮下。常識の通じない新入社員に振り回されている管理職、を薮下は体現しているのではないでしょうか。そしてその新入社員が信じられないような有能、というのですから上司としては堪ったものではないでしょう。
仲裁者的な桐生を間に挟んでの、一花と藪下のやりとりがすこぶる楽しい。

さて事件、思いも寄らなかった真相が明らかになります。
その直前の一花の危機、そして一花の倍返し、いや一花の逆転ぶりは思わず震えあがってしまう程。
面白かったァ! その一言に尽きます。お薦め。

1.一年生存率、二十パーセント未満/2.時間の動き出した部屋/3.殺しの境界線/4.リンクする二人の女/5.狩る者、狩られる者

                     

14.
「ヴィンテージガール-仕立屋探偵 桐ケ谷京介- ★★
 "Vintage girl" the dressmaker detective


ヴィンテージガール

2021年02月
講談社

(1550円+税)



2021/03/07



amazon.co.jp

法医昆虫学捜査官”シリーズの新鮮さが薄れてきたところで、次の座を窺うこれまたユニークな新探偵の登場でしょうか、探偵役となるのは警察と全く無縁の、仕立屋ならぬ服飾ブローカーである桐ヶ谷京介・34歳
東京の高円寺南商店街で小さな仕立屋を構えた主人公、実は美術解剖学と服飾について深い知識と洞察力を備えた人物で、欧州の有名ブランドと日本の高い技を持つ職人との橋渡し役。

その京介、10年前に起きたまま未解決となっている少女殺害事件に関する報道の中、遺留品として公開された奇妙な柄のワンピースに目を惹きつけられます。
この事件の真相に辿り着ける人間は自分しかいないと、同じ商店街でヴィンテージショップを任されている
水森小春・26歳(ヴィンテージ衣類の目利き&ゲームオタク)の助けや自分の服飾人脈を使って、少女の身元判明に動き出します。

従来の警察捜査、科学捜査では見落としてしまう、服飾関係という糸口から事件を調べていくという独創的な視点は、法医昆虫学捜査官と共通するところがあります。
ついつい被害者に感情移入して涙が止まらなくなってしまう京介に対して、ゲームさながらに攻撃的になるがプロとしての力量は京介に全く引けを取らない小春というコンビがすこぶる魅力的。

さて京介と小春たち、どんな仕立屋探偵ぶりを発揮するのやら。2人に協力する登場人物たちの人物像も面白く、かつ真相へ迫る展開が斬新で、たっぷり楽しめます。
登場初回とあって警察との協力関係はギクシャク続きでしたが、きっとシリーズものになる筈の次巻以降は、もう少しスムーズになるのでしょう。


1.アトミックと名もない少女/2.語りはじめた遺留品/3.職人たちの記憶/4.貧困と針仕事/5.少女の名前を口にするとき

              

15.
「うらんぼんの夜 ★★


うらんぼんの夜

2021年06月
朝日新聞出版

(1600円+税)



2021/06/30



amazon.co.jp

主人公である遠山奈穂は、公立高校にトップ入学する等成績優秀な高校生ですが、実家は農家で年中農作業の手伝いに駆り出されることが大いに不満。
しかも、川田で暮らす9世帯は昔から濃く繋がっていて、自分たちを
「内部落」を呼び、外から嫁に来た奈穂の母親を未だに「余所者」として区別しているといった閉鎖的な共同体。
そんな閉鎖性に我慢ならず、いずれこの土地から逃れ出て都会で暮らす、というのが奈穂の目標。

そんな奈穂の前に、東京から家族で近所に引っ越してきた
北方亜矢子が転校生として現れます。奈穂はすぐ亜矢子と親しくなるのですが、それと時を同じくして村の中で様々に不穏な出来事が起こる。奈穂の曾祖母を初め、内部落の者たちは余所者を受け入れた所為と亜矢子の一家への敵視を強めていく。
差別だと奈穂は憤るのですが、そのうち・・・・。

題名の「うらんぼん」とは、盂蘭盆会、お盆のこと。

奈穂の、嫌だ嫌だといいつつ見せる有能ぶり、次世代は奈穂に任せれば安心だという老婆たちの押しつけ、奈穂が逃げ出したくなると思うのも無理なし。つい奈穂に肩入れして読み進んでしまいます。

しかし、終盤、全ての真相が一気に一気に明らかにされていく展開は、もう圧巻。
驚愕させられ、絶句させられるばかりです。この大逆転劇にこそ、本ミステリの醍醐味がある、と言って過言ではありません。
そして最後に奈穂が決めた覚悟は、痛ましいというか、何と言うべきか・・・。


1.佇む地蔵さま/2.忌作とウランバナ/3.竹藪の鈴/4.逆さ吊りの女

     

川瀬七緒作品のページ No.1

          


   

to Top Page     to 国内作家 Index