学者である河合さんが、兵庫県丹後篠山での子供時代の思い出を元に描いたフィクション。
世界文化社発刊の「家庭画報」に連載され、脳梗塞で倒れるまでに執筆された分での単行本化とのこと。
ハァちゃんこと城山隼雄は、男ばかり6人兄弟の5番目。戦前の当時は軍国主義的風潮が広まっていて、「男の子は泣いてはいけない」というのが当然のことだったのに、何故かハァちゃんは泣き虫。
それも苛められて泣くというのではありません。「どんぐりころころ」の唄で山に帰れなくなったどんぐりが可哀相になって泣いてしまう、という信じ難いほど心の優しい男の子。
そんなハァちゃんに対し、「ほんまに悲しいときは、男の子も、泣いてもええんよ」とお母さんは優しい。
そんなハァちゃんの子供時代が、エピソードを連ねるという形式で描かれています。
まず6人という兄弟の多さに驚きます。それでも、一人一人個性的で、それなりに兄弟仲も良い。
ハァちゃんは泣き虫ですけれど、それは心の優しさの所為。そしてその優しさは、両親や4人の兄たちによってしっかり守られていると感じます。
人は人それぞれ、良い所も悪い所もそれぞれ。角を矯めるのではなく、その良いところを大事に伸ばしていくことが年長者の役割り、と教わったような気がします。
画一的に子供を育てるのではなく、伸び伸びとその良いところを育てていく。社会の健全な発展や未来や夢も、すべてそこから始まる、というメッセージを本書から貰ったように思います。
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