本能寺の変で何故信長の遺骸は発見されなかったのか? 本書はその謎を解こうとする歴史ミステリ。
主人公となるのは、信長に近侍し、後に「信長公記」を著した太田牛一(信定)。
信長という敬慕する稀代の革命児の記録を書き残そうと調べを進めるうち、遺骸をめぐる謎、さらには桶狭間の戦い、本能寺の変の秘密にまで行き着くというストーリィです。
また、それと並行して信長公記=15巻のほかに「首巻」という1巻がある理由も描かれます。
新たな視点の歴史小説、時代作家の誕生と話題になった作品ですが、率直にいって、読み始めた当初から余り面白さを感じませんでした。信長の遺骸が発見されなかったという謎に、そもそも興を感じなかったのです。
遺骸が発見されないことこそ信長らしい、と言ったのは司馬遼太郎作品中での秀吉だったと思います。その言葉のとおり、謎めいているからこそ魅力があり、それを無理に解き明かしてしまうのはむしろ興醒めと思えたのです。
さらに、信長と秀吉、付け加えて光秀のこの3人、史実だけでもうこれ以上ないというくらい面白いのです。それを今更隠された真実は・・・といっても、余り興味は惹かれない。
最後は約束事のように、真相(勿論フィクション)が明らかにされますが、だからどうした?と思ってしまう。
本作品は、私の如く信長に革命児としての魅力を感じているか、単なる戦国武将の一人として信長を見ているかによって、面白いかどうかの感じ方が大きく異なるように思います。
私としては、信長の遺骸が発見されなかった謎を明らかにするフィクションといっても、史実をもっと面白いものにしたとはついに感じられませんでした。
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