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「あなたの右手は蜂蜜の香り Your right hand has the scent of haney」 ★★ |
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2022年01月
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北海道倶知安町の小学生だった岡島雨子は、小三の時、町に現れたクマを見たくて、仲の良い那智くんと一緒に探しに出かける。 クマはぬいぐるみになったり可愛いのに、本当に怖い存在なのだろうか。 その雨子、道路の真ん中で蜂蜜の瓶に手を入れようとした子グマに近づいていき、声をかけます。しかし、その時近くに親グマの姿が。その瞬間にバンッ、バンッという音が鳴り響き、親グマは猟友会の人たちによって射殺されます。 子グマの「おかあさん、だいじょうぶ?」、「おかあさん、おかあさん」と涙をこぼしながら呼び続ける声を、雨子は忘れることができなくなります。全て自分の所為、と。 やがて雨子は飼育員を目指し、さらに「雪の介」と名付けられた子グマが飼われることになった仙台月ノ丘動物園を目指します。 そこで雨子は、ずっと「あなた」と呼んできた子グマに再会する一方、獣医を目指しているという那智くんとも再会します。 子グマと雨子の間に交わされる会話、それは心温まるものなのでしょうか、それとも雨子の幻想に過ぎないのでしょうか。 人と動物を分け隔てせず、動物の身についても真剣に思いをはせる雨子のことは素敵だなと思う一方、不気味にも感じてしまいます。 雨子の思いは、単に狂信的な思い込みに過ぎないのか。 それでも自分の心に従って、突っ走る雨子のことをどう考えたらいいのでしょうか。 何とも言いようのない、何とも言えない気持ちが、読了後いつまでも胸の中に留まります。 |