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「死んだ山田と教室」 ★★ メフィスト賞 |
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何と言っても着想に、そしてその展開に驚かされます。 舞台は、偏差値の高い名門男子校=啓栄大学附属穂木高等学校、2年E組の教室。 夏休みが終わる直前、クラスで人気者だった山田が死んだ。 勉強が出来て、面白くて、誰にでも親切、クラスがまとまる中心にいるような生徒。 2学期始まりの日、担任教師の花浦と共にクラスの皆が山田を偲んでいたら、何と、山田の声が聴こえてくる! 出処は、スピーカー? 山田、スピーカーに憑依したのか? 山田、自分は2年E組が大好きだった、と言う。その日はそのまま、山田が考えたという案どおりの席替えを実施。 山田はクラスの一人一人をよく見ていた、と皆が感嘆。 そこから始まる、死んだ山田と共にいる高二の後半の日々・・・で普通なら終わるところなのでしょうけど、終わらないところが面白い。 高二の間は親密にしていたクラスの仲間たちも、三年生になってクラスもそれぞれ別々に、教室も変わるとなれば、生徒それぞれ山田との温度差も生じてきます。さらに・・・。 声を聴くことしかできず、声しか出せない幽霊?というのも辛いものですねぇ。 ともあれ本作についていえば、幽霊譚ではなく、あくまで高校青春譚でしょう。 男子校ならではのアホっぽさみたいなものが充満していて、そこが本作の出色。 最後に、ミステリ要素も感じさせてくれるところが妙味。 さて本ストーリー、どういう結末を迎えるのか? それはもう読んでいただくしかありませんが、やはり驚かされました。 1.死んだ山田と席替え/2.死んだ山田と夕焼け/3.死んだ山田とスクープ/4.死んだ山田とカフェ/5.死んだ山田と誕生日/6.死んだ山田と最終回/7.死んだ山田と夜/8.死んだ山田と卒業/9.死んだ山田と憂鬱/最終話.死んだ山田と教室 |
2. | |
「死んだ石井の大群」 ★★ |
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奇想、第2弾。 前作と同様、学校が舞台なのかなと思っていましたが、全く異なるストーリー。 中二、14歳の石井唯。死にたいと思っていたが、未だに死ねず。 目が覚めたところ、そこは体育館のような広い部屋で、大勢の人間がいた。一体ここは何処なのか? 唯が考えている時間もなく、全員に死のゲームが始まります。 失格すれば首に嵌められた首輪が爆発、本人は死に至る。 そこで分かったのは、集められた 333人全員が、「石井」であること。 一体、誰が、何の目的でこんなことを繰り広げているのか? 一方、小説家の道を諦めて探偵事務所を営んでいる伏見、高校の同級生で劇団を主宰している鶴田から、千秋楽前に失踪した有望な中年新人俳優=石井有一を探し出して欲しいと依頼を受け、助手格の蜂須賀と共にさっそく行動に開始します。 その石井有一、 333人の中にいた石井有一と同一人物なのか? 全く理解できない世界のいる大勢の石井たち、そして現実の人探し。交互に展開するこの2つのストーリィはどういう関係にあるのか、どんな意味があるのか。 ドッジボール、しりとり、じゃんけんという一般的な遊びに加えられた特別なルール。それによって次々と多くの石井たちが殺されて行く展開は、本当に恐ろしい。 両者の関係がわかるのは、最後の最後になってから。 成程っ、そういう意味だったのかぁ〜〜。しかしまぁ、よくもこうした奇想を思いつくものだと感嘆します。 物好きな方、是非お薦めです。 1.デッド・ドッジ・ボール/2.禁字しりとり/3.最初からグー、永遠にグー/終章.死んだ石井の大群 |
3. | |
「死んだ木村を上演 Derform Kimura the Departed」 ★★ |
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“死んだ○○”シリーズ? 第3弾。 題名の頭部こそ同様の文言ながら、作品の趣向は毎度大きく異なります。したがって、今度はどんな趣向?というのが、本シリーズの楽しみ処です。 本作も期待を裏切ず、お見事! 冒頭、啓栄大学演劇研究会のメンバーだった4人(庭田悠成・咲本寧々・羽鳥芽以・井波郁人)が地方の駅に降り立ちます。 8年前、彼らと脚本・演出担当だった木村は卒業記念演目の稽古のため温泉宿に泊まり込んだのですが、その最中に木村が近くの川で溺死するという事件が起き、警察によって事故と判定されたという出来事があった。 そして今、4人の元に「誰が木村を殺したのか、八年前の真実が知りたければ、2024年1月9日14時、雛月温泉の宿・極楽へ来い」という呼び出し手紙が届きます。 そして宿に着いた4人は、彼らを呼び出した人物から、木村の死の真相を知るため、死んだ日の行動を再現(演じる)よう要求される。 現在の進行と、彼ら自身によって演じられる過去の進行が、並行して進む。これが絶妙の面白さ。 そして終盤、ある疑問点が明らかになると、突然4人の中の一人が、自分が木村を殺してしまったと懺悔し始めます。 しかし、それは死の真相なのか? そこから登場人物たちの容赦ない言葉が飛び交い、組んず解れつの言葉バトルが開始されます。 その怒涛のような部分が、圧巻の面白さ。 特筆したいのは、登場人物の会話について大抵の小説は一人ずつ記載されるものですが、本作では相手の言葉を遮るように、被せるように言葉を放っていく様子がリアルに、工夫によって描き出されていること。 だからこそ、4人の間での言葉バトルが凄まじい。 そのうえで、最終的なオチと、結末の気持ち良さがお見事。 本作の趣向もまた、たっぷり堪能しました。 |