神永 学作品のページ


1974年山梨県生、日本映画学校卒。2003年文芸社から自費出版した「赤い隻眼」が好評で、それを大幅に加筆・修正した「心霊探偵 八雲 赤い瞳は知っている」にて作家デビュー。


1.タイム・ラッシュ

2.ラザロの迷宮

  


 

1.

「タイム・ラッシュ−天命探偵 真田省吾− ★☆


タイム・ラッシュ

2008年03月
新潮社

(1000円+税)

2010年08月
新潮文庫

2008/06/15

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疾走感溢れるサスペンス、という賞賛文句に惹かれて読んだのですが、期待した割りに物足りず。

ストーリィは、12歳の時交通事故にあって以降、起こるべき殺人事件を夢でみて予知してしまうという車椅子の美少女=中西志乃と、副題にある“天命探偵”=真田省吾の2人が主軸となる現代サスペンス。
やがて事件の真相に近付くにつれ、志乃と省吾の間に因縁とでも言う他ない深い関わりがあることが明らかになっていく。

まぁどんどん読めてそれなりに面白い、というストーリィではあるのですが、登場人物は限定されているし、ストーリィにリアル感、奥行きがあまり感じられません。ライト・ノベルという感じで楽しむべき作品かなと思います。
題名からは、“天命探偵”というとどんな不思議なキャラクターかと期待してしまうのですが、真田省吾自身は元警官の山縣が経営する<ファミリー調査サービス>という零細探偵事務所の、同僚である20代後半に肉感的美女=公香と2人だけの所員に過ぎないのですよ。

まぁ、シリーズ化されて主要な登場人物たちのキャラクターがもっと膨らんでいけば、それなりに楽しめるシリーズ物になりうるのでは、と思いますが。

       

2.

「ラザロの迷宮 The Labyrinch of Lazarus ★★   


ラザロの迷宮

2023年09月
新潮社

(1800円+税)



2023/10/08



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神永さんの新作はいつも気にしていましたが、シリーズものというのは一度乗り遅れてしまうと中々入り込めないもの。ということでずっと手を出さないままになっていましたが、本作はシリーズものではないとのことから、読んだ次第です。

世田町警察署に突然現れた、血だらけでナイフを手にした若者。殺人犯?と思いきや、何とその若者は記憶喪失、そのため「A」と呼ばれることになります。その彼が最後に口にしたのは「ラザロ・・・」という言葉。
難解な事件解明のため捜査課の刑事=
美波紗和がコンビを組むことになったのは、元精神科医だという警視庁の久賀瑛人警部
その久賀は、尋常ではない捜査方法を美波に提案する・・・。

一方、上記に並行して、20代半ばのミステリ作家=
月島理生が、友人である永門学に誘われてさるペンションで行われる謎解きイベント“ラザロの迷宮”に参加したところ、本当の殺人が連続して発生するという事件が描かれます。
 <※目次番号:前者はアラビア数字、後者はローマ数字>。

2つのストーリィがどう関わっているのか。
中盤、そこは作者の誘導によって、何となく分かってきます。
そして、複雑な事件の鍵は、終盤明らかにされますが、コレってあり?と思わぬでもなし。

最後の展開には驚かされますが、それ以上に驚かされたのは、事件が解決したと思わされてからの二転三転。
これにはもう、絶句するしかありません。

本作、最後の最後まで油断できないミステリ。
とはいっても、複雑な仕掛けが張り巡らされただけのミステリ、と思わぬでもなし。


序章.来訪者/1.喪失/2.目眩/3.棺/4.混沌/5.惨劇/終章.ラザロ

  


  

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