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「救われてんじゃねえよ SACHI There's No Place Like Home」 ★★★ | |
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リアルな介護小説。圧倒され尽くした感あり。 主人公の沙智は高校二年生。母親が難病で立ち居振る舞いが不自由となり、排泄等の介護に明け暮れる。 親子三人で住んでいるのは築50年の県営住宅で、八畳一間+ユニットバスというのが凄い。 父親は介護に知らんぷりしており、同じ部屋で住み暮らしているからには無視することなど到底無理、沙智が介護せざるを得ない状況。 そのうえに凄いと思うのは、高校生の娘が寝ている横で両親がセックスしていること。うわぁ、よくやるよなぁ。 ヤングケアラーというと健気さ故の悲惨さを感じてしまうことが多いのですが、この現場には笑いもあります。 母親を支えようとした沙智が、母親と一緒に倒れ込んでしまう、ちょうどその時TVから流れた芸人のネタに爆笑してしまう、という場面がその象徴。 修学旅行にも行けないと、沙智の状況は気の毒な限りですが、笑いと同衾しているから救われている、と感じます。 そうした笑いは、沙智が自分を客観視できているからこそ。そこに沙智の強さを感じますが、同時にリアルな介護小説として成立しています。 ※作者の上村さん自身、高校時に母親の介護経験がある由。 「救われてんじゃねえよ」は、沙智が高校二年時。 「泣いてんじゃねえよ」は、東京に進学した大学四年生時。 地元企業でのインターン研修のため帰郷した沙智に、両親は沙智のUターン就職、介護復帰を当然のこととして要求します。 「縋ってんじゃねえよ」は、東京で沙智が就職した3ヶ月目。母親は沙智の仕事中にもかかわらず電話してくる。 この両親のアホらしさが凄いというか、笑えるというか。おかげで悲惨さがすっ飛んでいる、という感じ。 両親と自分の状況を客観視できるからこそ、沙智は両親の娘への依存姿勢を突っぱねることができるのでしょう。 いやぁ、凄い小説を読んだ、という一言。 是非、お薦め。 救われてんじゃねえよ/泣いてんじゃねえよ/縋ってんじゃねえよ |