加賀谷きよい作品のページ


1980年生、岩手県花巻市出身、東北大学卒。「天を朱に染め−御伽草子異聞−」にて日本ファンタジーノベル大賞2026を受賞。受賞作を加筆・修正のうえ改題して単行本化。なお、サカキヤヨイ名義にて2022年より絵本三冊を刊行。

 


                    

「朱天の都 ★★       日本ファンタジーノベル大賞2026


朱天の都

2026年06月
新潮社

(1950円+税)



2026/07/20



amazon.co.jp

“酒呑童子”伝説を題材にした、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。

酒呑童子伝説で思い出すのは、
今村翔吾「童の神
同作における
“鬼”とは朝廷の支配下に属さない民たちのことでしたが、本作では二本の角を生やした本来の“鬼”であり、人と鬼が共生している平安社会。

とはいえ、当時は貧しき者たちが飢えに苦しんでいる状況。それにもかかわらず
右大臣たちは民を救う手立ては何もとらず、悪いことはすべて鬼の所為にしている、という状況。
そして帝、ついに
源頼光とその配下である藤原保昌らに鬼退治を命じる、という次第。

それに対し、
大江山に住まう鬼たちの首領が美麗な朱天童子、その片腕であるのが陽気な茨木童子という次第。
その朱天童子が右大臣の異母妹である
内侍に魅了されてしまったところから、朱天童子らが人間たちに近付くことになり、やがて壮絶な戦いへと展開していきます。

朱天や茨木ら、気が好くて優しく、そして楽しい奴ら。権謀術策に明け暮れ、自分の欲ばかり追求しようとしている高位の人間たちに比べると、余っ程好ましい存在です。
いったい<鬼>とは何なのか。是非はどこにあるのか。

両者の戦いだけでも十分以上に読み応えがありますが、思わぬ存在まで登場し、ヤラレタ!という痛快感あり。
伝説の面白さに、戦いの興奮、そして予想外の驚き、そして登場するキャラクターの魅力(皆を引っかき回している感ある内侍や老・
安倍晴明を含む)と、多様な面白さが味わえる本作ですが、“鬼”とは何か?という問い掛けがまた心憎い。

熾烈な争いが描かれるストーリーですが、何処かおどけたコミカルさのある処が、本作の最大の魅力でしょう。
加賀谷きよいさんの今後に期待大です。


序幕/
第一部:1.王都爛熟/2.麗景殿の尚侍/3.鴨川地獄絵図/4.大江山合戦/
第二部:1.鬼ノ国縁起/2.鬼姫繚乱/3.百鬼夜行/4.天を朱に染め/
終幕

       


   

to Top Page     to 国内作家 Index