角野
(かどの)栄子作品のページ


1935年東京都深川生、早稲田大学教育学部英語英文学科卒。大学卒業後出版社に勤務。25歳からブラジルに2年間滞在し、70年その体験を元に描いたノンフィクション「ルイジンニョ少年ブラジルをたずねて」にて作家デビュー。82年「おおどろぼうブラブラ氏」にて産経児童出版文化賞、84年「ズボン船長さんの話」「わたしのママはしずかさん」にて路傍の石文学賞、「ズボン船長さんの話」にて旺文社児童文学賞、85〜86年「魔女の宅急便」にて第23回野間児童文芸賞、第34回小学館文学賞、IBBYオナーリスト文学賞等受賞多数。2000年紫綬褒章、14年旭日小綬章、18年国際アンデルセン賞作家賞を受章。

 


       

●「ラスト ラン」● ★★


ラストラン画像

2011年01月
角川書店刊
(1500円+税)

2014年02月
角川文庫化



2011/03/05



amazon.co.jp

74歳のイコさん、久しぶりにバイクで最後のツーリング、ラストランをしようと思い立ちます。
さて行き先はどうしようか。思いついたのは、5歳の時に死に別れたために残された写真しか思い出のない実母の故郷、岡山までのラストラン。
辿り着いたその岡山県・川辺で、実母が育ったと思われる家屋を訪ねると、そこで出会ったのは12歳くらいの少女。
ふーちゃんと名乗るその少女、実はゆうれいなのだという。ふーちゃん、どうもイコさんの実母が12歳の時の姿らしい。
すっかり気の合った2人、イコさんのバイク“オオタくん”に跨り、走り出します。

大人も子供も楽しめるファンタジーを目指した“銀のさじ”シリーズらしい一冊。
74歳の娘と、この世での心残りが何であるのかを忘れてしまった12歳の少女姿の実母という、ファンタジーだからこその組み合わせ。楽しいと同時に心温まります。
さらに2人が一緒にバイクに跨り走り出せば、そこに繰り広げられるのは、ロードノベルの楽しさです。

とはいえこうしたストーリィ、最後はファンタジーが終わっておしまい、というのが殆どのパターン。ところが本書、ファンタジーはなおも続き、しかも74歳のイコさんがこれからの生活を楽しみにするという結末は、飛び上がる程嬉しい。
切なく、されど温かく楽しい、というファンタジーな母娘物語。
お薦めです。

        


   

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