壁井ユカコ作品のページ


沖縄出身の父と北海道出身の母をもつ東京生まれ、信州育ち。学習院大学経済学部経営学科卒。2001年「キーリ 死者たちは荒野に眠る」にて第9回電撃小説大賞・大賞を受賞し、2003年同作にて作家デビュー。東京在住。


1.
サマーサイダー

2.2.43 清陰高校男子バレー部

3.2.43 清陰高校男子バレー部 second season
   (文庫改題:2.43 清陰高校男子バレー部 代表決定戦編)

4.空への助走−福蜂工業高校運動部−

5.2.43 清陰高校男子バレー部 春高編

 


           

1.

「サマーサイダー Summer Cider」● ★★


サマーサイダー画像

2011年10月
文芸春秋刊
(1500円+税)

2014年04月
文春文庫化


2011/10/30


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女子の倉田ミズ、男子の三浦誉、恵悠という3人は、小学校以来の幼馴染で、今は高校1年生。
彼らは廃校になった市立ひぐら中学校の最後の卒業生だったことから、不要となった備品を地方の学校に寄贈するための整理に夏休み中駆り出されます。次第に参加する卒業生が減る中、最後まで残ったのがこの3人。
整理作業を仕切るのは、育児休暇中の教師=
松沢千比呂。赤ん坊の夏央を抱えながら、作業を監督しているという次第。
三人の胸のうちに去来するのは、昨年の夏、単身者向け教員宿舎の部屋で変死体として発見された当時の担任=
佐野青春のこと。
学年の最初に赴任してきた佐野、何かと蝉の一生に話を結びつける、奇妙なところのある教師だった。

幼馴染の男女3人がお互いに隠し合っている秘密、そして1年前の事件の秘密が、3人が作業を続ける中で徐々に露わになっていきます。
ストーリィは、1年前と現在を自在に行き来しながら進んでいきます。その辺りも本作品に惹きつけられる理由のひとつ。

ホラー、ミステリ、青春、3人が各々抱える思い、それらのストーリィ要素が見事に合わさって終始スリリング、どんな展開になるのやらまるで予想がつかない、というストーリィ。
そんなスリリングな味わいを3人の青春風景に付け加えられているところが、本書の魅力です。
青春&ホラー小説の佳作、といって間違いありません。

                     

2.

「2.43 清陰高校男子バレー部 ★★☆


2.43清陰高校男子バレー部画像

2013年07月
集英社刊
(1700円+税)

2015年03月
2015年04月
集英社文庫化
(1.2.巻)



2013/08/17



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熱い高校青春スポーツ小説、男子バレー編。
個性的な選手が集まって一つのチームを構成していく。
本書は、そのチームを構成するに至る一人一人を各章にて主人公として描き、それを組み合わせていくことによって一つのチームを小説としても作り上げていくという構成になっています。
個性的なメンバーとチームという組み合わせは、
小瀬木麻美「ラブオールプレーに似たところがあります。しかし、「ラブオールプレー」が個性だけでなく才能に溢れた選手たちが集まって試合を勝ち抜いていくというストーリィであるのに対し、本書では選手それぞれが欠点を抱え、しかもスタート前の段階、目標を定めそれに向かっていくまでの苦闘を描くストーリィになっています。
お互いに信頼し合うのはそう簡単なことではない、ということでしょうか。

でも本書、すこぶる楽しいのです。チームとしてではなく、まず一人一人がバレーに夢中になる過程を描いているというストーリィがそこに展開されているからでしょう。
そして次にどういう展開が待っているのかまるで予想つかず。先が見えないだけにスリリングなのです。
そのスリリングをもたらす本ストーリィの核となっている2人が、絶対的セッター=
灰島公誓(チカ)とエースアタッカー候補の黒羽祐仁(ユニ)
それにしても、性格的に難があるのは灰島の方ですが、より心配なのはどうもユニの優柔不断な性格の方のようです。
後は、読んでのお楽しみ。 暑い夏にお薦め!

※ちなみに「2.43」とは高校バレー全国大会でのネットの高さ。

プロローグ:冷たい指/少年ユニチカ/ドラキュラといばら姫/犬の目線とキリンの目線/漂流ユニチカ/スタンド・バイ・ミー/エピローグ:つなぐ/「2.43」がもっとわかるバレーボール初級講座

        

3.
「2.43 清陰高校男子バレー部 second season ★★
 (文庫改題:2.43 清陰高校男子バレー部 代表決定戦編)


2.43 second season

2015年06月
集英社刊

(1600円+税)

2017年11月
2017年12月
集英社文庫化
(1.2.巻)



2015/07/10



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高校スポーツ、男子バレー部編「2.43−清陰高校男子バレー部」の続編。
いよいよ春高バレー大会に向けて県内大会が始まります。
そこで清陰高校の前に立ち塞がるのが、福井県下で8年連続優勝を遂げている常勝校、絶対的エース=
三村統(すばる)を擁する福峰工業高校

元々清陰高校には、部員がたった8名というハンデあり。そのうえ主将の
小田は 163cmと小柄。
それでも天才セッターの
灰島公誓と伸び盛りのエースアタッカー=黒羽祐仁を核にしたチームワークがあれば十分戦える筈。
ところが、実際は計算どおりにいかないもの。灰島と他のメンバーとの呼吸が乱れ始め、さらに黒羽がまたしても自信喪失に陥るという具合。
まぁ、そう簡単に勝ち進んでしまっては小説として成り立たないとい言えばその通りなのですが。
そうした苦労あっても決勝戦、相手は三村統が率いる強豪=福峰工業高。案の定、清陰は絶対絶命のピンチに追い込まれていきます。さてそこから逆転なるのか、清陰高校・・・。

そこはそれ、高校生たちが主人公ですから、ちょっとしたことで心揺れ、チームの雰囲気も左右されるというもの。
しかし本書ではそれを超えて、ピンチに追い込まれてからの清陰と福峰の一進一退、白熱の激戦が圧巻!

詠み終えた後は、まさに現実のチーム試合を観終わった後のような気分。スポーツ小説好きな方には読み応えたっぷり!


プロローグ:真ん中の罠/1.笑うキングと泣き虫ジャック/2.ユニチカ包囲網/3.いばら姫はドラキュラのXXで目覚める/4.英雄と天才/エピローグ:ジャンプ/「2.43」がもっとわかるバレーボール初級講座

                 

4.
「空への助走−福蜂(ふくほう)工業高校運動部− ★★☆


空への助走

2016年10月
集英社刊

(1600円+税)



2016/11/02



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いいなァ。
部活スポーツまっしぐらの高校生たちを描いたスポーツ小説だろうと思ったのですが、それがちと違った・・・。
各篇での主人公たちが自分はトップではないことにちょっぴり挫折感を抱いている、そんな設定がとても良い。スポーツに秀でているという点を抜かせば、皆同じ高校生なのですから。

福井県にある高校の運動部を主体にした連作もの。全て福蜂工業高校かと思ったらそうではなく、他の高校運動部も登場。そんな融通無碍さ、枠に捉われていないところも好感。
スポーツ中心だけれど、自分への戸惑いや恋愛感情も描かれていて、スポーツ小説というよりごく普通の高校生たちの青春ストーリィという印象の方が濃い。
どの篇も、ドラマ・読み処ともたっぷりで、中編というページ数がぴったり。まさにお読み得、と言って良い一冊です。


「強者の同盟」:男子バレー部。中学までは絶対的なエースアタッカー。でも高校に入ると同じ部に更なる上がいて・・・。頑張る意味を新たに見つけるストーリィ。
 ※
2.43に登場した三村統が率いるバレー部の前日譚。
「空への助走」:陸上部。ずっと憧れの先輩を見続けてきて、今や自分も引退の時期。気づくと自分が逆に後輩から憧れの目で見られていた・・・。自分の価値を認識、新たな可能性に向けて踏み出すストーリィ。
「途中下車の海」:柔道部。冒頭の挫折きっかけが噴飯もの。そこから釣り部が登場してくるという展開が何ともはや。今、自分にとって何が大事なのか、に気づくストーリィ。
「桜のエール」:大団円的エピローグ篇。

「強者の同盟」において脇役なのですが、写真係の
はっちこと初田稚以子が見逃せません。平均的な高校生像から一歩も二歩も抜き出たところがあり、今は彼らの先を進む、そして彼らの目指すべき将来像とも言えるところが魅力です。
赤緒梓といい、古賀あゆみといい、総体的に男子より女子の方が元気良く、ずっと逞しいなぁ。

強者の同盟/空への助走/途中下車の海/桜のエール

                

5.
「2.43 清陰高校男子バレー部 春高編 ★★


2.43 清陰高校男子バレー部 春高編

2018年09月
集英社

(1700円+税)

(1)2021年02月
(2)2021年03月
集英社文庫



2018/11/07



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シリーズ第3弾。
前巻で福井県代表の座を勝ち取った清陰高校男子バレー部、いよいよ<春の高校バレー全国大会>に出場です。
初出場にして部員は僅か8名。
何の注目も集めていなかったそんな清陰高校男子バレー部が予想外に勝ち進み、また激戦を展開するにつて、注目を惹きつけていきます。

実況中継さながらに、激闘をつぶさに、リアルに、そして選手の心理状況まで手に取るように秒単位さらながで描いていく故に、興奮尽きず、頁をめくる手が止まりません。
本作はそんな一冊。

冒頭のプロローグではまず、本大会で優勝を争うに違いない有力校、
浅野直澄率いる東京都の新興:景星高校と、弓掛篤志率いる福岡県の古豪:箕宿(みぼし)高校の2校の様子が描かれます。
それに対して1年生部員の2人=天才セッター
灰島公誓(チカ)とアタッカー黒羽祐仁(ユニ)が躍動する清陰高校バレー部は、激戦をどう戦っていくのか、上記の景星高校、箕宿高校とコートで相まみえることがあるのか、そこが興味処です。

本作の最後に描かれる彼らの1年後の姿に得心できるかどうかは読み手の好み次第だと思いますが、本作の真価は相次ぐ激戦の様子を迫真の圧倒感をもって描き出したところにあり、それに尽きるといって過言ではありません。

エピローグは、その興奮なかなか止まない熱を冷まし、シリーズの終幕を告げる場面かなと感じた次第です。

プロローグ.星の激突/1.ユニチカ出航!綺羅星の海へ/2.星を射る勇者/3.覇道に清き帆をあげて/4.スノードームに宇宙を抱く/エピローグ.スイングバイ

   


   

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