方丈貴恵(ほうじょう)作品のページ


1984年兵庫県生、京都大学卒。在学時は京都大学推理小説研究会に所属。2019年「時空旅行者の砂時計」にて第29回鮎川哲也賞を受賞し作家デビュー。


1.時空旅行者の砂時計

2.孤島の来訪者

3.名探偵に甘美なる死を

 


                   

1.
「時空旅行者の砂時計 The Time and Space Traveler's Sandglass ★★


時空旅行者の砂時計

2019年10月
東京創元社

(1700円+税)



2019/11/03



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加茂冬馬の妻=伶奈は急病で生死が危ぶまれる状況。
そして彼女が口にしたのは、
「竜泉家の呪いからは絶対に逃れられない」という言葉。
絶望感にかられる冬馬のスマホに電話を掛けて来たのは、
マイスター・ホラと名乗る人物。そのホラ、冬馬が1960年の過去に戻り、当時起きた妻の祖先である竜泉家を襲った惨劇の真相を明らかにして惨劇を防げば、運命が変わり伶奈を救うことができる筈と明言します。

その言葉を信じ、冬馬は
<奇跡の砂時計>により1960年にタイムトラベル。
辿り着いた先は
志野、竜泉家の別荘。当主である竜泉太賀の誕生日祝いに一族が大勢集まっていた。
土砂崩れで竜泉一族が死ぬに至った
「死野の惨劇」まであと4日間、冬馬は別荘で起きた殺人事件の真相を解明することができるのか・・・。

冬馬とマイスター・ホラのタイムトラベルは、単なる舞台設定、ミステリ解明のための時限設定のためと思いきや、それにとどまらないところが本作の特徴。
なにしろ、冬馬が1960年に戻って最初に出会った人物、
13歳の竜泉文香に早々から未来から来た人間であることがバレてしまうのですから。
前半、竜泉一族の人間が次々と殺害されるという展開。そして後半に至って真相解明という展開。

とにかく驚かされ、呆れる程なのは、仕掛けの多いこと。真に限りなし、という具合です。
そもそもタイムトラベル自体が、ミステリの真相と不可分に結びついているのです。まさにミステリ&タイムトラベルもの。
その仕掛けの多さは、タマネギの皮を剥くに等しい。

本作を気に入るかどうかは、読者を翻弄し尽くす仕掛けの多さを是とするか否とするかでしょう。
私については、エピローグの仕掛けが気に入りましたので、是という結論です。

仕掛けの多さに興味を持たれた方、是非挑戦してみてください。
※かのエラリー・クイーンのように
「マイスター・ホラによる読者への挑戦」もありますよ。

マイスター・ホラによる序文/プロローグ/第一章〜第六章/マイスター・ホラによる読者への挑戦/第七章/エピローグ

             

2.
「孤島の来訪者 ★★


孤島の来訪者

2020年11月
東京創元社

(1800円+税)



2020/12/21



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<竜泉家の一族>シリーズ第2弾。

ミステリと思って読み始めたのですが、主人公たちが撮影のため赴いた
幽世島(かくりょじま)で待ち受けていたものは・・・。
これってホラー?? でもやはりミステリなんですよねー。
時空旅行者の砂時計でも驚かされましたが、本作でも驚かされました。よくやるなぁ、の一言。
読む人の好み次第と思いますが、前作と同様、特殊な舞台設定に何層にも仕掛けられた謎解き、私は存分に楽しめました。

45年前に起きた
<幽世島の獣>事件で島民12人全員が殺され、今は無人島となっている鹿児島県の幽世島。
撮影のためその島に赴いたのはTV制作会社のスタッフ、カメラマン、学者等、計8人、
その内の一人である主人公=
竜泉佑樹は、メンバーの内3人に対し、殺された幼馴染の復讐を計画していた。
しかし、島には45年毎に現れるという異世界からの化け物
<マレヒト>が待ち構えていて、佑樹に先んじて仇を殺してしまう。
そこから佑樹は、復讐者転じて探偵役となり、マレヒトとその謎に対決することになるのですが・・・。

竜泉の一族といっても本ストーリィに竜泉家は絡みません。
また、
マイスター・ホラも、前作のような鍵を握る重要な存在となることはなく、単にストーリィの案内役兼「読者への挑戦」を仕掛ける役割というだけ。
普通、<挑戦>の後は<真相解明>で完結する筈なのですが、そこから二転三転する処が、方丈さんの喰わせ者らしさ。

※マレヒト、不気味で恐ろしいのですが、中々面白い存在です。


マイスター・ホラによる序文/新聞記事と「アンソルヴド」(一)/プロローグ.船上にて/菜穂子の死/第1章.本島−撮影準備/「アンソルヴド」(二)/第2章.本島−撮影開始/菜穂子の遺書と新聞記事/第3章.本島−撮影中断/第4章.本島−異常事態/三雲の父/第5章.本島・神域−分断/第6章.本島・神域−合流/マレヒトの独白(一)/第7章.本島−暗号解読/マレヒトの独白(二)/第8章.本島−襲撃対策/マイスター・ホラによる読者への挑戦/第9章.本島−推理披露/第10章.船上−事件終結/エピローグ.船上にて

                

3.
「名探偵に甘美なる死を Delicious Death for Detectives ★★


名探偵に甘美なる死を

2022年01月
文芸春秋

(2000円+税)



2022/02/01



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<竜泉家の一族>シリーズ第3弾。

相も変わらず複雑な構成のミステリです、このシリーズは。
でもそこに中毒的な魅力がある訳で、手に取らずにはいられません。
今回は、仮想空間メタバース(VR空間)と現実世界、その双方にまたがる殺人事件の謎を追うミステリ。

加茂冬馬の元に、世界有数のゲーム会社=メガロドンソフトのゲームプロデューサーだという椋田千景から、VRミステリゲームのイベントで犯人役を務めてほしいという依頼があります。
引き受けた冬馬は事前作業を経て、瀬戸内海の戌乃島にある
メガロドン荘に赴きますが、そこに集められていたのは冬馬を含む素人探偵8名。なんとその中には、妻の従兄弟である竜泉佑樹の姿もあった。
しかし、思わぬことにそのイベントは、単なるゲームなどではなく、彼らに対する復讐の罠だった。
彼ら自身の命ばかりか、および彼らの大事な人たちまで人質に取られ、素人探偵8名は否応なく生死をかけたゲームに参加させられます。
それも何と、VR空間と現実世界の双方で起きる殺人事件の解明という複雑な設定。そして早速、彼らの中の1名が死体となって発見されるという事件が発生し・・・。

VR空間と現実世界での事件がごちゃまぜとなって進んでいきますから、頭を整理して付いていくのは、中々至難のこと。
それでも犯人を特定するための丁々発止のやりとりは、結構スリルがあります。

その辺りも面白いのですが、事件の背後にあった思わぬ謎が事件解決後に明らかにされる、というところが特に私には面白い。
成る程、だから<竜泉家の一族>シリーズなのかと納得させられます。

なお、
マイスター・ホラによる「読者への挑戦」、本作では2回あります。お楽しみに。

マイスター・ホラによる序文/プロローグ/
第1章.キックオフ・ミーティング/第2章.試遊会 一日目 オープニング/第3章.試遊会 一日目 チュートリアル/第4章.試遊会 一日目 第一波/第5章.試遊会 二日目 調査フェーズ@/第6章.試遊会 二日目 調査フェーズ@/第7章.試遊会 二日目 解答フェーズ@/第8章.試遊会 二日目 第二波と調査フェーズB/マイスター・ホラによる読者への第一の挑戦/
第9章.試遊会 二日目 解答フェーズA/第10章.試遊会 二日目 第三波/第11章.試遊会 三日目 調査フェーズC/マイスター・ホラによる読者への第二の挑戦/
第12章.試遊会 三日目 解答フェーズB/第13章.試遊会 三日目 解答フェーズC/エピローグ

  


   

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