弘也
(ひろや)英明作品のページ


1982年神奈川県川崎市生、立教大学文学部心理学科卒。現在、岡山県在住の会社員。2007年処女小説「厭犬伝」にて第19回日本ファンタジーノベル大賞大賞を受賞。

  


 

●「厭犬伝(えんけんでん)」● ★★     日本ファンタジーノベル大賞 大賞




2007年11月
新潮社刊
(1200円+税)

 

2007/12/13

 

amazon.co.jp

読んでいる間面白いことは面白かったし、すっかりハマッてましたというのも事実。
息もつかせず、目を逸らさせないスピーディな展開に、確かに夢中にさせられてしまったのですけれど、これって、ヴァーチャルでの格闘ゲームだよなぁ・・・・。
言ってみれば、画面上のヴァーチャル格闘ゲームの興奮を、文章の世界に実現してみせた、という作品。
文字と画像、相反するものと思い込んでいたのですが、その違いを超えてしまうことも出来るんだよなぁ。その意味で本書は、画期的な作品と言えるでしょう。
でも後に残ったものはというと、格闘ゲームの興奮と余韻だけのような気がする・・・。

舞台となるのは、魑魅魍魎が跋扈する異世界。そこでは、死んだ人間の骸から生えた「汚木(よごれぎ)」から「」を作るという風習がある。
「仏」とは祈る対象としての仏像ではなく、格闘ゲーム(この世界では「合(あわせ)」と呼ばれる)のための踊り人形のような存在。操り者は、仏の基となった人間と気持ちを一体にして戦う、というもの。
丘陵警(森林警備隊のようなものか)の厭太郎は、逮捕しようとした悪辣な仏師=犬暁が逃走しようとして事故死した責任を問われ、仇討を名乗り出た犬暁の娘=犬千代と生死を賭けて「合」の対戦を行なうことになります。
その犬千代が恐ろしく強い。事前に手合わせた厭太郎は、自分が犬千代にまるで歯が立たないのを知る。
厭太郎は、合の達人=鵜市らの助けを借りて修練に励みますが、果たして犬千代を凌ぐことができるのか、というストーリィ。

私は格闘ゲームに全く無縁ですが、格闘ゲームファンの方なら本書はさぞ面白いのではないか、と思う次第。

 


  

to Top Page     to 国内作家 Index