平戸 萌作品のページ


1983年神奈川県生、一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。2014年度「オーバー・ザカウンター」、2018年度「春の朝」にてすばる文学賞最終候補、2022年「私が鳥のときは」にて第4回氷室冴子青春文学賞大賞を受賞し、23年同作にて作家デビュー。

 


                   

「私が鳥のときは ★★☆       氷室冴子青春文学賞大賞


私が鳥のときは

2023年11月
河出書房新社

(1650円+税)



2024/01/31



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読むかどうか逡巡して先延ばしにしてきたのですが、結果的に読んでよかったです。
まさに青春文学、というに相応しい佳作。

「私が鳥のときは」
娘の
蒼子が中三、受験生だというのに、母はスーパーで元パート仲間であったバナミ(芭波)という女性を家に連れ帰って来て、「さらってきちゃった」と一言。
そのバナミは30歳くらい、末期がんで既に余命宣告を受けた月数を越えているのだと。
ガサツで遠慮のないバナミに蒼子は反感を抱きますが、同居している内次第に・・・。
そして、高校に行けなかったから高校受験をしたいというバナミと一緒に、受験塾で友人となった
ヒナちゃんの指導を受けながら受験勉強に励むのですが・・・。

最初の印象と異なり、バナミという女性がどれだけ一生懸命に生きてきたか、そして何故蒼子の家に同居したのか、彼女が秘めていた篤い思いは圧巻です。
そしてそれは、蒼子をもまた強く成長させたのではないか。
忘れ難い青春小説の一幕。

「アイムアハッピー・フォーエバー」
中一だった頃の
バナミを主人公にした、書下ろし作品。
中学に入ってせっかくテニス部に入部したというのに、学校で使えるテニスコートは一面のみ。結果、一年生はコートに立てさせてもらえず、基礎練習だけ。
そのことに不満を溜めたバナミたちは、
英子という年配女性の家にあるテニスコートを使わせてもらうことに成功します。
その英子と知り合ったことによってバナミは、ちょっとだけ大人の世界を垣間見ることになります。
バナミの幼馴染である
優太、その従弟の翔太、テニス部の仲間たちと、中学生たちが数多く登場し、まさに青春小説という名に相応しい。

青春文学が魅力的なのは、登場人物たちが青春記にあるというだけではなく、小説の最後が彼らの未来へと輝かしく繋がっていくからでしょう。
本作もまさにそうした作品です。 お薦め。


私が鳥のときは/アイムアハッピー・フォーエバー

        


   

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