林 譲治作品のページ


1962年北海道生。臨床検査技師を経て、95年「大日本帝国欧州電撃作戦」(共著)にて作家デビュー。確かな歴史観に裏打ちされた架空戦記小説にて人気を集める。ミリタリーSFシリーズ《星系出雲の兵站》全9巻にて第41回日本SF大賞および第52回星雲賞日本長編部門を受賞。

  


       

「地球壮年期の終わり ★★   


地球壮年期の終わり

2026年01月
早川書房

(2300円+税)



2026/04/10



amazon.co.jp

本書題名、私は未読ですが、アーサー・C・クラークのSF名作「地球幼年期の終わり」を意識したものでしょう。

舞台は2034年、中東での水利権紛争から発した戦争と混乱に満ちた時代。
ストーリーは、三人の人物を主人公とし、それぞれが宇宙人と遭遇するところから始まります。
一人目は、自衛隊の物資輸送を請け負っている
紅谷祐介。エジプトの砂漠で宇宙人のカスケリスに遭遇、助けられます。
二人目は、
病院船ガラテアで偵察機機長を務める藤堂直子。地中海で危機に直面したガラテアは、謎の飛行物体に救われます。
三人目は、
青沼玲香。資金洗浄組織から大金を着服して逃走中、足柄SAで絶体絶命の処を宇宙人サタミホリスに助けられます。

三人とも、それぞれの場所、それぞれの危機を宇宙人たちに助けられるのですが、やがてそれはひとつの場所、舞台に収斂していきます。

紅谷から目的を問われたカスケリスが、
「侵略かな、たぶん」と呑気に答えるところが面白い。
何に行動についても「調査」だという彼らの目的は、本当に侵略なのか。彼らの行動は何を意味しているのか、という点がストーリーの興味処なのですが、本作の面白さはストーリーより、彼ら三人と宇宙人たちの会話にあります。

とにかく、やりとりが面白い。地球人じゃなく宇宙人だからとぼけた発言をしても不思議ないと言えばそのとおりなのですが、むしろ宇宙人たちの発言の方が正鵠を射ているのです。
例えば、食べるためでもないのに地球人同士で殺し合っている、等々。
宇宙から俯瞰してみれば、確かに地球人同士で殺し合い、それがエスカレートしていけば人類が滅亡するのは必然的な結果。
終盤、ブルスパリスの語りは、まさにトランプが自ら仕掛けたイラン戦争に現時点で行き詰っているのを予言するような内容で、驚かされます。
また、紅谷祐介、青沼玲香の正体も現実的、かつ示唆的。

国、地域、人種に囚われた発想を捨て、地球全体で考えることに移行しないと人類の滅亡は避けらないという、警告を含んだ痛快なSFストーリー。お薦めです。


1.邂逅・紅谷祐介の場合/2.邂逅・病院船ガラテアの場合/3.邂逅・青沼玲香の場合/4.カスケリスとの旅路/5.ブルスバリスとの交渉/6.サタミホリスとの旅路/7.アレキサンドリア・ムブヤ/8.有志国連合艦隊/9.東京から/10.マトゥマイニ/11.ターレクとサルマ/12.大侵略

           


  

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