劇団ひとり作品のページ


1977年千葉県生。父親の仕事の関係で幼少期をアラスカで過ごす。1992年デビュー。コンビ“スープレックス”を結成するが2000年解散。ピン芸人として再出発後、総勢十名のキャラクターを演じる一人芝居で注目される。2006年処女作「陰日向に咲く」を刊行。

  


 

●「陰日向に咲く」● 




2006年01月
幻冬舎刊

(1400円+税)

2008年08月
幻冬舎文庫化

  

2007/04/08

 

amazon.co.jp

昨年相当に話題となった一冊。
図書館へ予約しようにも 約300人待ちという状態だったので仕方ないなぁと思っていたのですが、然る所で簡単に借りることができたためやっと読むことができました。

ところが、そんなに話題になる程面白いのかなァコレ、というのが正直な感想。
その理由は何かというと、納得感が得られなかったこと。
冒頭の「道草」は、決まりきった生活に疲れたサラリーマンがホームレスに憧れ、実際に実行に移す話。ホームレスになるのは勝手なのだが、ホームレスに決別して会社に戻った後すんなり昇進軌道に乗ってしまう、というところがなぁ・・・・。
「拝啓、僕のアイドル様」はあまり売れないアイドル・ミャーコのために自分の生活まで犠牲にして尽くす青年ファンの話。自分を犠牲にするにしても、ホームレスと残飯を奪い合うまでに至ってしまうというのは余りに嘘っぽくて・・・。
「ピンボケな私」は、好きになったにしろ、しつこく求められたにしろ結果的には関わった男と簡単にセックスしてしまう若い女の子の話。デジカメ操作にしても騙されたことにしても、余りに愚か過ぎて・・・。
「Over run」は、ヘンな理屈を繰り広げるが要はサラ金の多重債務者となって、老婆に振込詐欺を仕掛けるどころかすっかり息子役を務めることになってしまったドジ駅員の話。
そして最後を飾る「鳴き砂を歩く犬」は、どうしようもないネタ頼みのダメ芸人と彼をめぐる2人の女性の話。

本書に描かれる主人公たちは、かくも社会から落ちこぼれたような人間ばかりなのです(元ホームレスのみ例外かもしれない)。そんな彼らの演じる喜怒哀楽混じりの人情劇、というところでしょうか。
恐らく、誇張された世界である舞台の上でなら、面白いドラマになるのかもしれません。
各編の登場人物が様々に絡み合うという要素があるとしても、小説なりの納得感が得られなかったため、だからどうした?と面白さを感じるまでには至らず。

道草/拝啓、僕のアイドル様/ピンボケな私/Over run/鳴き砂を歩く犬

 


  

to Top Page     to 国内作家 Index